43日目 ページ43
『シャオちゃん』
「…」
『やっぱり、怒ってる…?』
「…怒ってへん」
『じゃあ、こっち向いてよ』
「…嫌や」
声色的には、怒っていないことはわかる。
かける言葉は素っ気ないが、その声はとても優しいし、その上、鼻声だ。
やはり、夜風は冷えるからだろうか。
それとも、私がここにきた理由を知っていてだろうか。
『…ごめんね、手、振り払って』
「ええねん、そんなの、俺が悪かったんやし」
『でも、嫌だったでしょ』
「…俺のこと、嫌いになった…?」
『ううん、ずっと、大好き』
「ほんまに?」
『本当に』
振り向いた彼は、目の下を赤く晴らしていて、最初の青い彼を連想させる。
何かと、あの二人は仲が良かったのを思い出す。
お互いに、困った時によく頼っていたし、喧嘩しているところは見たことがない。
彼は、どこか不満げな様子で、こちらを見ていた。
『どうしたの?』
「…こんな格好悪い姿で、会いたくなかってん」
『そんなことないよ』
「…優しくせんといて、一緒におりたくなってまうから」
彼の透き通った黄色の瞳からは、さらに澄んだ涙が溢れるようにポタポタと地面を濡らした。
そんな彼を、耐えきれずに抱きしめた。
驚いたような声が耳ともで聞こえるが、何かを堪えるような声が後に聞こえてきたかと思えば、背中にたくましい腕が回った。
『本当に愛してた、この命を、捨ててもいいとさえ思えたの』
「っ…かっこ悪…」
『私、知ってるよ、シャオちゃんが、昔みんなで選んであげた帽子、何度も何度も直しながら使ってるの』
「…!」
『ありがとう、シャオロン』
精一杯笑って見せれば、驚きながらも笑い返してくれる彼が、今までにないくらいに綺麗で。
彼の頰に手を添えて、同じくキスを1つ。
そうすれば、満足気に、瞼を閉じ、黄昏ながらにこう言ったのだ。
「普通に、愛してやりたかった」
彼の涙を吸い取ったように、その言葉に私は涙を抑えられなかった。
駄目だ。
彼を、幸せに送り出さなければいけないのに。
止まらぬ涙に戸惑っていれば、彼は追い討ちをかけるように言った。
「Aも俺らも、欲張りやったんやな」
彼は乱暴に小瓶を奪い、一粒勢いのまま口に入れた。
そして、初めて薬の飲めた達成感に喜ぶ子供のように、ニカッと笑うので。
私も、くしゃくしゃの顔で笑った。
130人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぱずる(プロフ) - 感動してボロボロ泣きましたwなんと言えばいいのか分かりませんが、とても素敵なお話でした。面白かったです!! (2021年4月30日 1時) (レス) id: 6fda5d1ca9 (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - みみみさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなってしまい申し訳ありません!書き終えてから少し走り気味だったかもと反省していた部分があったので、好きという言葉をいただけて本当に嬉しいです!他の作品もよろしければ見てやってください。 (2020年3月6日 0時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - わたあめさん» コメントありがとうございます。返事が遅くなってしまい申し訳ありません!走りが気になってしまった部分もあり少し心残りのある作品だったので、そう言っていただけると嬉しいです!他の作品もよろしければ見てやってください。 (2020年3月6日 0時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
みみみ - やっと見つけました! 本当に好きです! (2020年2月16日 17時) (レス) id: a3e96579f7 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - 初コメ失礼します…?感想っていうか…この話本当に好きです。他のどんな話よりも。本当に。作者さんに尊敬の花束を。 わたあめ(語彙力溶けた) (2019年7月31日 11時) (レス) id: 058dc021e0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:そういろね | 作成日時:2019年4月9日 19時