17日目 ページ17
「っ、は…」
『…シイナ、もう少しだから、頑張って…！』
彼女のその軽やかな動きと体力は、流石一国の軍隊を育てているだけはある。
現役とはいえ、毎日毎日扱かれまくったこの身は、不安定な足元を40分近く走っていれば息切れが止まらない。
彼女は、不安と焦りのせいか、心底心配で仕方ないという顔で私のことを励ました。
『…！見えた、あそこ！』
「っ…？」
彼女が指差したのは、隣国であるシアール国と我々国を繋ぐ橋。
深く広がる渓谷で隔てられており、シアール国に入国するにはこの橋しか行くことはできない。
数年前、不朽により崩れたと言われていたが、新しく、綺麗に直されているようだった。
『…お疲れ様、この橋を渡ってすぐのところに、隠れ家があるから、今日は一晩、そこで過ごそう』
「……はい」
いろいろ聞たいことはあるが、優先すべきは私のこのボロボロの身体だろう。
足がすくんで、何度も転んでしまいそうになるのを、Aさんに助けて貰う。
何とも情け無い。
この人に、あれだけ体力をつけてもらったし、できる限り体力を使わないで済む動き方だって学んでいたのに。
『…ありがとう、私について来てくれて』
そんな私の心を見透かすかのように、彼女は優しく笑ってそう言ってくれた。
ありがとう、だなんて。
私が言いたいくらいだ。
こんな、まだ出会ったばっかの私に、ついて来て欲しいだなんて、そんな言葉をかけてくれてのだから。
愛しい人からの、これ以上ないほどの誘い文句を、私は貰ってしまったのだから。
「そ、そんな…」
『ん、顔赤いね、のぼせちゃったのかもしれないし、早く休も』
「は、はいっ…」
そう言うと、Aさんは何もない地面をいきなり手で払い始めた。
何事かと目を見開けば、薄っすらと鉄の板が見え、それが地下への扉だと気づくのにそう時間はかからなかった。
彼女が暗証番号を入力すれば、自動的に扉は横へスライドした。
地下の中は快適なスペースが広がっていて、豪華なホテルかのようだった。
『さて、シイナ、眠い？』
「いいえ、でも、足は疲れました」
『うん、眠くないならいいや、取り敢えず、時間がないから、今全部話すよ』
彼女は、いつものようにお茶の準備をし始めた。
しかし、その手の震えは止まらず、金属の触れ合う音が、いつもよりも無機質に響いた気がした。
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ぱずる(プロフ) - 感動してボロボロ泣きましたwなんと言えばいいのか分かりませんが、とても素敵なお話でした。面白かったです!! (2021年4月30日 1時) (
レス) id: 6fda5d1ca9 (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - みみみさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなってしまい申し訳ありません！書き終えてから少し走り気味だったかもと反省していた部分があったので、好きという言葉をいただけて本当に嬉しいです！他の作品もよろしければ見てやってください。 (2020年3月6日 0時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - わたあめさん» コメントありがとうございます。返事が遅くなってしまい申し訳ありません！走りが気になってしまった部分もあり少し心残りのある作品だったので、そう言っていただけると嬉しいです！他の作品もよろしければ見てやってください。 (2020年3月6日 0時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
みみみ - やっと見つけました！ 本当に好きです！ (2020年2月16日 17時) (レス) id: a3e96579f7 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - 初コメ失礼します…？感想っていうか…この話本当に好きです。他のどんな話よりも。本当に。作者さんに尊敬の花束を。 わたあめ(語彙力溶けた) (2019年7月31日 11時) (レス) id: 058dc021e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：そういろね | 作成日時：2019年4月9日 19時
