35日目 ページ35
意識がなくなった彼女を倒れてしまう前に支え、抱き抱えてから立ち上がった。
息が荒い、体から伝わる熱が、服越しからでも伝わってくる。
もしかして、病弱なのだろうか。
これからあいつらに引き渡すというのに、こんなことを無駄に考えてしまう。
…仕方がない、自身の恋人に、今城で人質として寒い地下で苦しそうに寝込んでいるあの子に、似ているのだから。
「…ごめん」
そう呟いて、シイナが帰ってくる前に家を出て、手配されていた馬車に乗った。
彼女を反対側の座席に下ろし、タオルケットをかけた。
この時期、まだ冷えるから。
情が移りそうになるのをひたすらに堪えて、目を瞑った。
___いくらか寝ていた。
目を覚ますと、外の景色を切なそうに見るAの姿があった。
それが、滅多に外出できない、あの子の外を羨む眼差しに似ていて。
また、胸が締め付けられた。
『…何処から何処までが、嘘なんですか』
「キャネルって名乗っていた時に話していたことは、ほとんど嘘だよ、でも、君の村のことは、予想はできるけど真相は知らないし、守らなきゃならない人がいるのは、本当」
『…彼らは、どうして、私なんかを愛してしまったんでしょう』
「綺麗だからじゃないの」
『…じゃあ、私がこの顔を、ギタギタに切り刻んだら、彼らは私を見放しますか』
「……絶対に、無いだろうね」
そう言えば、驚いたように顔を上げた彼女と目が合う。
そして、また耐えきれなくなったのか、ボロボロと涙を零した。
ねぇ、君は何に泣いているの。
愛されることが、そんなにも恐ろしいの。
たしかに、あいつらは恋に盲目で、愛にも盲目だけど、それ相応に、いつまでも愛してくれる。
君が
きっと、あいつらは君だけを愛し続けている。
「…あいつらは、君の容姿とか、性格とか、そういうのじゃなくて、君自身が好きなんだと思うよ」
『…ど、いう…？』
「君の姿形がどれだけ変わろうとも、彼らは君という存在を愛し続けるんだよ、何度君に拒絶されようが、御構い無しに」
『…』
「だから、もう、終わりにしよう」
『え…？』
「俺には何もできないけど、君に輪廻の終わりを伝えることならできるよ」
彼女は、あいつらと同じで、押し付けることで逃げて、避けることで逃げている。
お互いに逃げてしまっている。
恐れてしまっている。
だから。
「受け止めてやって、あいつらのこと」
もう、逃げないで。
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ぱずる(プロフ) - 感動してボロボロ泣きましたwなんと言えばいいのか分かりませんが、とても素敵なお話でした。面白かったです!! (2021年4月30日 1時) (
レス) id: 6fda5d1ca9 (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - みみみさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなってしまい申し訳ありません！書き終えてから少し走り気味だったかもと反省していた部分があったので、好きという言葉をいただけて本当に嬉しいです！他の作品もよろしければ見てやってください。 (2020年3月6日 0時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - わたあめさん» コメントありがとうございます。返事が遅くなってしまい申し訳ありません！走りが気になってしまった部分もあり少し心残りのある作品だったので、そう言っていただけると嬉しいです！他の作品もよろしければ見てやってください。 (2020年3月6日 0時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
みみみ - やっと見つけました！ 本当に好きです！ (2020年2月16日 17時) (レス) id: a3e96579f7 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - 初コメ失礼します…？感想っていうか…この話本当に好きです。他のどんな話よりも。本当に。作者さんに尊敬の花束を。 わたあめ(語彙力溶けた) (2019年7月31日 11時) (レス) id: 058dc021e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：そういろね | 作成日時：2019年4月9日 19時
