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「寒い…」
「今年はまだ冷えるなぁ…」
「大先生そのセーター何年着てんねん、ようそんなに痛まんな」
「んー…まあ、たまたまやろ」
これもAから貰ったものだ。
高校一年生の時に、急に編み物を教えて欲しいと言われ、教えて、初めて最後まで作ったのがこのセーターだ。
紺に近い青色。
Aが毛糸を見ていた時に、即決で決めたもので、他にも可愛い色あるで、って言ったが、これが1番好きだと言っていた。
地味な色だとは思ったが、Aはあまり派手な色やデザインを好まないので、納得していたが。
「あ、A！おはよ」
『ん、おはよ、今日も仲良ええな』
「そこで会っただけや、A、またその服着とんの？」
「大先生とお揃いになってまうで？」
『この服気に入ってんねん、似合うやろ』
「似合っとるけどなぁ…大先生脱げや」
「この会話毎回やらなあかんの？」
俺が編み物を教えられたのは、その時に付き合ってた彼女の趣味がたまたま編み物で、遊ぶ時にはいつも編み物講座を延々と聞かされていたからだ。
普通なら、自称JKのオスマンとかに聞けばいいものの、聞けば大先生がいいと言うのだから、あの時だけは本当にいろいろとしんどかった。
高校一年生の時に女遊びが酷くなったのは、Aとの距離が、弁当やらチョコやら編み物やらで急速に近づいてしまうような気がしたからだ。
「それどこで売っとんの？探してもあんま無いねんけど」
「Aは手作り言われても納得するけど…大先生はな…」
「元カノからのプレゼントとかやろ」
「そか」
「それかその時までしか売っとらんかったんちゃう？」
「せやな」
セーターを貰ったのは誕生日の日だった。
いつも誰かの誕生日はその人の家で祝っているのだが、皆が帰った夜遅くに、わざわざ届けてくれたのを覚えている。
あの時の誕生日前の一週間、あいつらが遊びに誘っても乗らなかった理由はそれだろう。
他の奴らはいつも何かしら買ってきているのに、わざわざ手作りのものをくれたのは、記憶にある限りは初めてだ。
「これは、俺も気に入っとんねん」
「…珍しいな、鬱先生が、元カノのプレゼント長い間使ってるのは」
「本命やったんちゃう？」
「あ、もしかして、チョコの奴もその元カノのからか！」
「お前ら目の前に本人いるのわかっとる？」
別に、ペアルックみたいになるのが嬉しいから、よく着てるわけじゃない。
そんなんじゃ、ない。
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作者名：そういろね | 作成日時：2019年4月4日 4時
