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「Aちゃん、お風呂入っておいで」
『ええの？』
「ええよ、皆ご飯後にしか入らんねん、昔からAちゃん早風呂やったやろ？」
『んー…じゃあお言葉に甘えますぅ』
一番風呂は少し申し訳ないのか、渋々と言った感じで風呂場へと向かって行った。
Aがリビングから出て行った瞬間、おかんと親父がずいずいと迫ってきた。
「なあ鬱、ほんまにAちゃんと付き合っとるん？」
「そんな嘘つかへんよ」
「…傷つけたらあかんで？Aちゃん、まだ立ち直り切れとらんのやから」
「分かっとるよ」
正直、Aと恋人になろうとなんて考えていなかった。
だから浮気だって普通にしてた。
それに、Aと付き合うのは、あいつらの中の誰かだったら誰でもいいと思ってた。
好きやったから、結局複雑なんやけど。
でも、Aの事情知っている、支えてやれる誰かなら、それで良かったのかもしれない。
「恋人のことは、自分で解決せなあかんのやで、人に頼りすぎるんは、逆に毒やけな」
「頼っちゃあかんの？」
「全くとは言わんけどな、Aちゃんはお前を選んだんやから、その責任はちゃんととったらな、可哀想やろ」
「…責任、なぁ」
Aにとって、俺にとって欲しい責任って何なんだろう。
特別何かを求められるわけではないし、強請られるわけでもない。
もしかしたら、まだ付き合って間もないから遠慮しているのかもしれない。
…いや、我儘を言えなくなったのだろう。
全部が全部が重なって、未だに自分を縛り付けている。
「…責任取らな、Aの親御さんに申し訳ないもんな」
「せやで、ちゃんとあの2人にも報告したり」
「ん」
「そんで、次帰って来る時は、新しい報告手土産に来てな」
驚いておかんを見れば、それはそれは楽しみと言った様子で、そのまますぐ台所へ消えて行き、少ししてから火をつける音が聞こえて来た。
「なあ、鬱」
「何、酒ならまだ飲めんで」
「ちゃうわ、お前は俺のことなんやと思ってんねん」
「…あかんわ、いい例えが出てこん、そんなことはええわ、何？」
「Aちゃん共々、隠し事なんかしとったらあかんで、すぐに悪い形でバレてまうんやから」
「実体験か」
「…あん時の母さんは怖かったで」
真っ青になった男を無視して明日の天気をニュースで眺めていた。
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作者名：そういろね | 作成日時：2019年4月4日 4時
