検索窓
今日:3 hit、昨日:19 hit、合計:32,739 hit

17 ページ17

『サメおるで、大きいなぁ…』

「近くで見ると結構迫力あんねんな」

『ぬいぐるみやとかわええのに…リアルはちょっとグロテスクやな…』


Aは気難しい顔をしてガラスに張り付いて、近くを泳ぐサメを見て呟いていた。
周りは暗く、青色の光だけが足元を照らしていた。
Aは、ガラスに指を這わせ、指に反応するようにガラスをつつく魚を一枚越しにつついて、驚いて高速で泳ぎ逃げる魚を見てクスクスと笑っていた。


『次は海行きたいな、潜りたい』

「サメに食われてまうで」

『…うち美味しくないで』

「人肉なんて大差ないと思うけどな、一口でバクリいかれてまうやろな」

『ぅ…怖…』

「サメいない海水浴場行こな」

『そうして』


手を繋ぐのには慣れてしまったようだ。
どちらとでもなく、当たり前のように繋ぐのが、嬉しいような、照れた顔が見えないのが少し残念なような。
彼女は周りの水槽に興味津々なようで、情けないが、Aに腕を引かれて、それに着いていくような形になってしまっている。


『…あ、ニモや』

「クマノミやんな、案外小さいな」

『かわええなぁ…』

「飼いたい?」

『…死ぬところは、見たないな』

「…せやな」


Aの手が微かに震えていた。
安心させるようにぎゅっと握れば、驚いたかのように顔を上げた。
それを利用して、軽く、触れるだけのキスをした。
戸惑ったように口をはくはくと魚のように開閉を繰り返すので、今度は額に唇を落とした。


『なに、しとんの…』

「大学でキスしたんに、ここでは恥ずかしいん?」

『…人目があるやろ、大学よりも』

「んふ、かわええなぁ、顔赤いで」

『赤ないわ、青色や』

「負けじと赤いねん、顔熱いで?」


Aは不服そうに唇を尖らせた。
確かに、周りの暗さと青い光で顔の色なんてほぼ真っ青だけれど、微かに光る、せめてもの照明が、彼女の熱く火照った頰をほんのりとうつしていた。
実際に頰に触れれば、熱が出たかのように熱かった。


『…ありがと』

「何が?」

『…別に、何でもない』

「あっちにチンアナゴおるで」

『にゅるにゅるしとるやん…』

「ワカメだってにゅるにゅるしとるで?」

『何その暴論』

18→←16



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (70 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
118人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:そういろね | 作成日時:2019年4月4日 4時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。