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Aの首へ回された白い手をよく見れば傷も少なくなかった。
さっきも酒を飲みながらこれでもかと言うほど愚痴を零して、きっとそれもまだ全て吐ききれていないはずだ。
苦労していたと傷の多い手が物語っている様だった。
「…着いたぞ」
背中からゆっくり布団に降ろしてAを寝かせた。
「じゃあな」
「…行っちゃうの?」
俺を呼び止めるAの声は酔って舌足らずの声では無く、いつものAの声だった。
「俺ァ明日も仕事だ」
「んじゃ…ちょっと、こっち」
「なんだよ…_っ」
手招かれ傍に寄るとそのまま後頭部を掴まれ引き寄せられていく。目の前にいるAも目を閉じている。今どういう状況かなんて考えるまでもなかった。
だが正直、このまま乗せられても良い。
それでも悪い気はしなかった
どうせ意識も朦朧としているAは自分がした事など明日には忘れてしまうだろう。
「っ待て…!」
唇が触れ合いかけた直前でAの口元に手で抑えた。
「………酔い過ぎだ」
Aは閉じていた目を開いた。
「酔ってない」
「酔ってる」
「酔ってない」
「お前な…いい加減にしろよ」
このまま説教でも垂れてやろうかと思ったが酔っている奴に説教した所で意味が無い。
「……こ、この野郎」
数秒考えた結果、両頬をつねる事にしたのだが
「いひゃい」
「…………フッ」
笑いを抑えられず咄嗟に腕に顔を伏せた。
「(可愛い顔しやがってこいつ…クソ…)」
笑いを抑えようと自分と戦っているとAがブツブツと何か言い始めた。
「いお こすそ ろ…」
「な、なんだ…?」
「…おい、殺すぞ」
発音練習をしていた様だ。
そろそろ離さないとブチ切れそうな剣幕をしていたので言う通りにした。
「お、おう」
______って何離してんだよ俺ァァ…!!
そうだ、俺は酔った勢いに任せて行動するなと説教を…
「良いか、酔った勢いに任せ___」
「もう良い寝る 帰って」
「あァ、悪かったな」
パタン、と障子を閉めて自室に戻る。
「いやだからなんで俺が謝ってんの………!?!?」
テンポ良すぎんだろ!?短時間で何回ツッこませんだよ!
そんな中、時計は深夜の2時半を回ろうとしていた。
明日も6時起きだ。もう4時間しか寝る時間は無い。
色々言いたいことを胸の中に押し込めて布団に入った。
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阿呆代表の神(プロフ) - なんやねんこの凄い作品は。有料でも良いくらい素晴らしい作品。 (2021年3月9日 21時) (レス) id: 10eaece567 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです( ; ; )更新頑張ってくださいーー! (2021年2月1日 1時) (レス) id: e52e19fe2f (このIDを非表示/違反報告)
れんか - めっちゃ面白い(笑)更新頑張ってください! (2021年1月29日 11時) (レス) id: b5b9f86a00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちーずなん | 作成日時:2021年1月28日 23時