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_____数年前。
確か江戸に出る数日前の晩の話だっただろうか。
「土方ァ!!」
「っびっくりしたじゃねぇか!夜だぞ…どうした」
「土方が江戸に出るのに理由はある?」
「いきなり何言ってんだ、酒飲んでんのか」
「飲んでねーよ馬鹿。良いから答えて」
「理由、……武士になれるんなら、そりゃ行くほか無ェだろ。それに近藤さんの背中預かってる限り俺はどこまでもついていくつもりだ」
土方にはそんなしっかりとした意思があった。
ただ、私には無かったのだ。正直いつか殺されるまで武州で喧嘩をしていても良かった。
「…理由も無いのに江戸に出て武士になろうなんて、そんな半端な真似私がしない方が良いよね」
「残りてェのか、
「さあ…でもみんながそれぞれの信念を持って江戸に出る中で私がそんな半端で良いのかなって」
「お前だけじゃねーだろ、ここにゃまだ半端ものしか居ねェ」
土方は当たり前のように言った。
「なんなら、俺の背中でも守ってみるか?」
その言葉に気持ちが少しも揺るがなかったといえば嘘になる。
あんな危なっかしい背中なら守りがいがある。
でも、私は土方と出会ってからずっとあいつを守るために生きてきたわけじゃない。
「いいや…私はあんたの背後なんかより隣で良い
それに、背中なら総悟も私も狙ってる。
他のやつが漬け込む隙なんて無いよ」
絶対に私と勝負してくれないあいつと、
どっちがくたばるのが早いか競うために。
走れなくなっても
無理矢理手を引っ張って走らせてやるために。
「そうかい…」
*
____なんて
「(そんなこと、なんで今思い出してんだか)」
「蘆、名…!早くこの男をどうにかせんか…!」
目の前で上様が苦しそうに藻掻く。
刀を握る理由___
私には今、上様を守るという真っ当な役目があるじゃないか。
「飯田、今の私は少なくともあんたよりマシな理由で刀握ってるよ」
「へえ…それじゃ、そのマシな理由とやらで握った刀の実力を見せて欲しいな」
飯田は目をギラつかせて私に刀を大きく振りかぶった。
*
土方side
「__A!」
突然切られた電話。
小さく男の声も聞こえた。何かあったんだろう。
「クソっ、…」
そして間もなくまた電話が鳴った。
山崎からだ。
「副長、ホシが見つかりました!すぐに応援お願いします!」
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阿呆代表の神(プロフ) - なんやねんこの凄い作品は。有料でも良いくらい素晴らしい作品。 (2021年3月9日 21時) (レス) id: 10eaece567 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです( ; ; )更新頑張ってくださいーー! (2021年2月1日 1時) (レス) id: e52e19fe2f (このIDを非表示/違反報告)
れんか - めっちゃ面白い(笑)更新頑張ってください! (2021年1月29日 11時) (レス) id: b5b9f86a00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちーずなん | 作成日時:2021年1月28日 23時