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その時、はっきりと聞こえた ”嫌じゃない” という声。
「…そうだね。仕事戻らないと」
だがAの次の一言で、さっきの言葉は帳消しになった。俺も聞こえなかった振りをしてまた筆を手に取る。
「じゃあ」
そう言ってAが部屋から出ていった後、静けさが増した部屋では一層あの言葉の意味をずっと考えてしまっていた。
厳密に言えば、意味というより解釈の仕方と言ったところか。
Aの言った言葉をちゃんと受け取ってやる事も出来る。だが言葉を取り消したという事はAはそれを望んでないということだろう。
「…クソ、面倒な女だな」
床に寝転び、そう言った字面とは裏腹に顔が緩んでしまうのだった。
*
Aside
「…げ」
部屋に帰れば、さっきまでなかった書類が机の上に置いてあった。きっと部下が置いていった休暇の分の仕事だろう。
仕事柄何日も休暇の取れる仕事じゃないのに、上様のご意向で無理矢理休暇を取ったせいでこの有様だ。
もうやる前から辞めたい。
「(そう言えば、私を刺したガキは…)」
あのガキは、結局捕まったんだろうか。
たまたま部屋の近くを通りかかった山崎を捕まえて尋ねることにした。
「山崎〜」
「あ、Aさん。おかえりなさい」
「ただいま、ちょっと聞きたいことがあって」
「聞きたいこと、ですか?」
「私の事刺した浪士はまだ逃げてる?」
「ああ…確か、まだ一番隊が追ってるはずです」
「…了解。ありがとう」
「あ、Aさん」
「どうした?」
「そういやさっき電話が来てました、…Aさんの仕事仲間だって言えば分かるとか
折り返し電話するよう頼まれてるんですけど…」
「……マジ?」
「マジですよ。チャラそうな奴だったから最初はいたずら電話だって勘違いしてましたけど」
チャラそうな仕事仲間、といえば
数週間前まで一緒に護衛の仕事をしていた男が一人いる。
「ちょっと掛け直してくる」
若干急ぎ足でその場を後にし、屯所の固定電話から折り返し電話を掛けた。
すると5コール目でガチャ、という音が鳴った。
「蘆名Aで___」
「蘆名、遅いよ電話。緊急時なんだけど」
彼は飯田、と言って私と同じく護衛を勤めていた役人だ。また、彼もどこからか剣の才を認められ引き抜かれただとか言っていたが。
「緊急時ね…」
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阿呆代表の神(プロフ) - なんやねんこの凄い作品は。有料でも良いくらい素晴らしい作品。 (2021年3月9日 21時) (レス) id: 10eaece567 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです( ; ; )更新頑張ってくださいーー! (2021年2月1日 1時) (レス) id: e52e19fe2f (このIDを非表示/違反報告)
れんか - めっちゃ面白い(笑)更新頑張ってください! (2021年1月29日 11時) (レス) id: b5b9f86a00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちーずなん | 作成日時:2021年1月28日 23時