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「っ、うるせえ!!」
なんて、そんな薄い説得が通用するはずもなく男は真っ直ぐ斬りかかってきた。
予想通り、まだ人を斬ったことすらない子供だろう。
「ゔ…っ!」
「うちの隊士、どこに向かっていった?」
見え見えの剣筋を避けて刀を蹴り飛ばし、刀を突きつけた。
「…教えない」
「じゃあ質問させて欲しいんだけど…
貴方、なんでこんなことしてるの?」
「…お前ら幕府に親を殺されたからだ」
今まで何度も聞いてきたそんな恨み言に何故か胸が傷んだ。
私が殺したわけじゃない、でも彼からすれば私が殺したも同然なんだろう。
「(可哀想な子…)」
なんて台詞を私がいえばただの皮肉にしか聞こえないだろう。
でもこれは本心、皮肉なんか混じってない。
____現に私も幕府の被害者だったりするから。
時代に親を殺された子供の気持ち位は分かる。
そんな彼は酷く脅えている様子に見えなくもないが、目は私から離れなかった。こんな芯の通ってるガキがまだ居たんだなとなんだか安心してしまう。
「そう」
そんな彼を刀を振り上げ目をつむった隙に峰打ちで気絶させた。しばらくは起きないだろう。
そしてその後も何度か浪士を脅しながら道を探りながら走った。何十分も走ったが、隊士に会えそうな気配がしなかった。
「どこまで行ってんだよ…」
もうそろそろ足も疲れてきた所だったから土方にまた電話しようと携帯を取りだした時。
「…もしもし、ひじか____」
背後から聞こえる何十人もの足音。
ゆっくり振り返ればそこには案の定数えきれない程の浪士。
「A、どうした」
「あんた本当に…こりゃいくらなんでも見落としすぎでしょうが」
「あァ?どういうこった」
「どういうこともなにも、私の目の前に何十人って浪士が居るのよ。
あーあ、私死んじゃっても知らないわよ?」
「…行きゃ良いんだろ行きゃ」
「早く来て」
ピッという音と共に切られた携帯を胸ポケットにしまって、何十人という数の浪士をもう一度見渡した。
「その制服、大物かと思えば女じゃねーか。」
「これでも一応真選組の幹部なんだけどね」
「幹部ねェ…ただの小銭係だろ?」
「なんだ知ってるんじゃない、そんな小銭係狙ったって意味無いでしょ」
こんなピリピリした空気も久々だ。
…なんだか、少し楽しくなってきたかもしれない。
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阿呆代表の神(プロフ) - なんやねんこの凄い作品は。有料でも良いくらい素晴らしい作品。 (2021年3月9日 21時) (レス) id: 10eaece567 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです( ; ; )更新頑張ってくださいーー! (2021年2月1日 1時) (レス) id: e52e19fe2f (このIDを非表示/違反報告)
れんか - めっちゃ面白い(笑)更新頑張ってください! (2021年1月29日 11時) (レス) id: b5b9f86a00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちーずなん | 作成日時:2021年1月28日 23時