17バレンタイン ページ17
「食べれなかった」
あれから何時間も経っているのに結局まだ1粒も食べれていない。
「…も、もう食わねーのか」
「まあ、多分ね」
「なら…貰う」
「え…?」
予想外の言葉だった。
チョコはもう食べきれないほど貰ってるはずなのに。
「もったいねーだろ、貰う」
「…いや、でも食べかけよ?それにまだたくさんチョコあるんじゃないの?」
「んな事いいからよこせ。
まだお前に貰ってねェ」
貰う前提だったかのような台詞。
さっきかららしくない言葉を連発しているではないか。目が点になって戻らない。
「なら、…最初から素直に欲しいって言えよ
バカ土方」
「勿体ねェから食うだけだ阿呆」
そんなやり取りに自分も含め土方もつくづく不器用だなと笑いそうになった。らしくないのは私だって同じだ。
バレンタインなんてイベントどうでもいいはずだったのにわざわざデパートに足を運んで、店員さんに苦めのチョコレートはあるかなんて聞いたんだから。
思わず口角が緩んでいる間に土方が1粒口にチョコを放り込んだ。
「どう?」
「…甘ェ」
「店で1番苦いやつなんだけど。
やっぱ味覚バカは違うわね」
「誰が味覚バカだ、一言多いんだよお前は」
「一言多いのが通常だから。
てかお互い仕事残ってるでしょ、ほら帰った帰った」
「へいへい…」
「あれ、全部持ってかないの?」
「良いのか?」
「だからどうせ食べないって。
それにこれ元々アンタに渡す予定だったし___」
「…?俺に?」
やばい、安心して口が滑った。
「だァァァァァァ!!違う!!!馬鹿!!!帰れ早く!!」
「お、おい!!投げんな!」
チョコレートの箱を外へ投げ、さっさと部屋から土方を追い出した。
「(馬鹿馬鹿…!何言ってんのよ…!)」
壁にもたれながら暫く顔を抑えながらうずくまっていると外から土方が喋りかけてきた。
「おい、A」
「何」
「…ありがとな」
土方が優しい声でそう言った後、足音が遠のいていくのが聞こえた。
「なんなの…?どこの中学生よ…」
最も成人男女の会話とは思えないだろう。
___まあ渡せたなら…良いのかな。
そんな自分に呆れながらまた書類に向かうのだった。
*
一方土方は。
「顔緩んでやすぜ、気持ち悪ィんですけど」
「…うるせェ」
内心嬉しすぎて消費期限ギリギリまで取っておいたとか、なんとか。
おわり
225人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
阿呆代表の神(プロフ) - なんやねんこの凄い作品は。有料でも良いくらい素晴らしい作品。 (2021年3月9日 21時) (レス) id: 10eaece567 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです( ; ; )更新頑張ってくださいーー! (2021年2月1日 1時) (レス) id: e52e19fe2f (このIDを非表示/違反報告)
れんか - めっちゃ面白い(笑)更新頑張ってください! (2021年1月29日 11時) (レス) id: b5b9f86a00 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ちーずなん | 作成日時:2021年1月28日 23時