桜のように可憐な君は。（参）【鬼滅の刃】【竈門炭治郎】

_月が綺麗ですね_ ページ40

時刻は10時。


湯浴みを終えたAは皆を起こさないようにと、冷たい廊下を小さな音を立てながら進んでいた。






…今日は長湯しちゃったなぁ。……少し暑い。






「(はやく部屋戻って寝よう…。)｣




部屋の方へ運ぼうとした足を、縁側の方に向け長い長い廊下を歩く。逆上せたからちょっと涼みたいし。






「…ん？｣



縁側に着くと、既に先客がいた。
縁側に腰掛け月を見上げるその姿は、いつにも増してかっこよく見える。


「…炭治郎｣


私の声にビクッと肩を震わせ驚いた顔でこちらを見る。えっビックリさせちゃった？…横座っていいかな…。


一人でオロオロとそんなことを考えていると、縁側に座った炭治郎が自分の足と足の間をポンポンと叩き



「A、おいで。今日は月が綺麗だよ。｣


そう言った。



…いやおかしくない！？距離やばいよね？！



「あ、でも湯冷めするのもいけないよな…。やっぱりはやく部屋に…｣



「うっ、ううん大丈夫だよ！少し暑くて、涼もうと思ってきたの。…、お邪魔するね。｣



お邪魔します…と小さな声で言い炭治郎の前に座る。空を見上げ思わず息を着いた。




雲ひとつない空に、ポツンと浮かぶ黄色の月。




「…そういえば最終戦別の時も黄色の月だったなぁ。｣



「そうだったか？｣


「私、遅れそうになってお月様追いかけるつもりで走ってたの。だからよく覚えてるよ。｣



近くで感じる炭治郎の体温。胸がドキドキしてどうにかなりそうだ。



「…炭治郎と見られてよかったな。｣


「(…ん？！私は今なんて！？)｣


「…本当だな。俺もAと見られてよかったよ。｣

…急に、この月がもう見れないんじゃないかと、思ってしまった。少し、いやかなり悲しい気持ちになる。


「…また見られるといいな。｣


そんなAの感情を読み取ったのか、炭治郎が優しい声でAに語りかけるよう話し出した。


「大丈夫だ。俺、もっともっと強くなるから。こんな怪我早く治してそれで…｣




そこまで言いかけて炭治郎は口を噤んだ。


…鬼殺隊は、常に死と隣り合わせ。
ついさっきまで隣にいた人がいきなり死んでしまうことだってある。


「…炭治郎。死んじゃ嫌だからね。｣


「何言ってんだ！俺は死なないぞ！｣


「ふっ、大丈夫。炭治郎は強いから。信じてるよ。｣



二人で見あげたこの月は







最終戦別に行く時に見上げた月の









何十倍も何百倍も









綺麗だったよ。炭治郎。

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