02「楽しみにしてるね」 ページ3
「……って、ことなんだけど」
翌日、葉星大学内にあるカフェスペースで。
劇団で彼女を連れてこい、という話が上がったことを本人――Aに伝えた。
にこにこと穏やかな表情で相槌を打っていたAは少しだけ驚いた後、「私も是非お邪魔したいな」と言った。
「いいのか?」
「うん。綴くんが普段過ごしてるところ、見てみたい」
それに賑やかで楽しそう、と嬉しそうに笑うAには癒されるけど、連れていったら連れていったであの人たちが大人しくなるとは思えない。
とんでもない質問を彼女に浴びせるのではないかと不安で仕方ない。もしそうなった時は俺がなんとかしないとな……。
「まあ、Aがいいなら俺はいいんだけど」
「私は全然大丈夫だよ。それと、いつお伺いしたらいいかな?」
「あー……明日の夕方以降、って空いてる?」
「うん。なにもないよ」
「じゃあ明日で。迎えに行くよ」
「ふふ、楽しみにしてるね」
◆
「明日彼女連れて来るんで。あんまり変なこと言わないようにしてくださいね」
帰宅後。彼女が喜んで来訪してくれるとの旨を伝えると皆――特に、監督は大喜びだった。
「いつ頃に来るんだ?」
「えっと……夕方っすね」
「せっかくだし綴くんの彼女さんにもカレーを……!」
「監督ちゃん」
「出たよカレー星人……」
みんな彼女のことを歓迎する雰囲気だ。
……まあ、いいか。
「ねえ、綴くん」
ぼーっとみんなの様子を見ていた時、監督がこちらへ静かに近寄ってくる。
「彼女さんって演劇に興味あるかな……?」
「いや、わかんないっすけど……もしかしてスカウトする気っすか?」
「……ダメかな?」
気まずそうに笑う監督。
……やっぱりその気だったか。
「いや別にダメってわけじゃないんすけど、今まで彼女の口からそれっぽい話聞いたことないし……」
「そうなんだ……。でも、彼女さんと一緒にいられたら綴くんも嬉しいでしょ」
ね、といたずらっ子のような笑みを浮かべる監督。
「あんまからかわないでください」
「あはは。照れてる?」
「……そりゃそんだけ言われたら照れもしますよ」
ぼそぼそと小さな声で呟くように言えば、「ごめんごめん、」と謝りながら、監督は苦笑した。
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鈴華 - 面白いです!更新楽しみにしてます♪ (2017年8月1日 23時) (レス) id: 74b9d455dd (このIDを非表示/違反報告)
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