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一通り全体での振り入れが終了し、各チームの練習時間へと移る。持ち込んだ荷物たちを片して、各々に与えてもらった部屋へと移動していく。Aはチーム練習まで少し時間があるため、軽くここで着替えてから行こうと思い、スタジオでみんなの背中を見送っていた。


「ね、」


とん、と軽く肩に手を置かれる。置かれたほうを向けば先ほどぶつかってしまったドレッドくん、もとい渡邉くんだった。
練習のときは気づかなかったけど、オレの方が少し身長が高いのか覗き込まれるようにして顔を見られる。改めてみてもマジのドレッド…初めてみた気がする。


「おお、驚かせてごめん。さっきのやつ、大丈夫だった?」
「あ、全然大丈夫す。こっちこそスミマセンでした。踊ってみたら意外と部屋狭かったすもんね」
「手足長いと困るよねー」
「…あー、そっすよね」
「…うん、良ければツッコんでほしかったわ」
「あはは、見た目が厳つすぎてムリでした」


明るい声色に人の良さが滲み出ている喋り方と表情は、初対面なのにまるで前から友だちだったかのような気がするほどだった。また自己紹介のときにも、謝られたときにも、そして今会話してみても思ったが、渡邉くんは多分ふつうの善良なお兄さんである。それ故か、つい調子に乗ってオレも茶化したような返事をしてしまった。


「そういやナマエくんってさ、21だったよね?」
「そうすね、渡邉くんは?」
「22」
「あ〜…」
「いや遠い目すんな、ほぼ変わんないだろ!」
「ふは、冗談です」

「とりあえず頑張ろうな、俺ら。ぶつかったのも何かの縁ってことで、さ!」
「それあんま縁起良くなさそうすけど、そうですね」
「ごちゃごちゃ言わない !」
「はあい」


「でもそうだ。──合宿で会いましょうね、ショウタくん」
「…おう、絶対な!」


オレに軽く手を振ってショウタくんがスタジオを出ていく。ショウタくんの人の良さのおかげか一気に距離が縮められたような気がして、オーディションで初の友だちが出来たと思った。汗で濡れたTシャツを脱ぎながらふ、と口元が緩んで笑みが溢れる。次の審査、合宿で会おうなんてつい大口叩いてしまったけど、なんとなく会える気がする。まあ、まず審査通過できるかってとこなんだけど。
そうこうしているうちに、いつの間にかチーム練習の開始の時刻に近づいていたため、Aは着替えたTシャツの上から適当にパーカーを羽織って急いでスタジオを後にした。


06 これは僕の話→←05 バイオレッタにごきげんよう



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作者名:ねむる | 作成日時:2023年11月7日 2時

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