02 もうじきの申し子 ページ3
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──「初めまして、花岡Aくん。よろしくお願いします」
画面越しに今回のオーディション主催者もとい日高さんの目がこちらを見つめる。
当たり前に大人である落ち着いた声に反して、大きな瞳が子どもみたいにキラキラとしていて、同じ空間でもないのに緊張感が増してスッと背筋が伸びた。
「姿勢が凄くいいね。モデルとか、なにかそういうのをやったことはありますか」
「えっ？あ、いや、スミマセン。モデルはー…、ないですね。小学生くらいのころに少し芸能活動をしたことはあったんですけど、」
てっきり動機やオーディションの意気込みを聞かれると思ってたもんだから、拍子抜けしてしまった。緊張していた身体から力が抜ける。自分が何言ってるかが分からなくなって誤魔化すように笑みを溢した。
「ははっ、ごめんね。唐突過ぎたね。あまりにも美しかったから気になってしまって。─それでは、早速にはなっちゃうんだけど、パフォーマンスお願いします」
画面に向かって頭を下げる。それを合図に現場にいるスタッフさんたちが、じゃあ後ろのここまで下がってと案内してくれるので返事をしながら立ち位置につけば、少し落ち着いていた緊張感がまたぶり返した。
俯いて鼻から大きく息を吸って呼吸を整える。肩を何度か上げ下げして強張った身体を解す。ヤベー、なんかゾクゾクする。オレならできるって自信と、これから始まる未知の世界への期待。たった今始まり出した新たな人生の一ページに、高揚感で頬が緩む。こんなところで終わってたまるかと曲のイントロが流れ出したと同時に顔を上げた。
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「ありがとう。緊張ってしてる？」
「あ、ハイ！そりゃしてます、ね」
「すごいね、全くそう感じさせない雰囲気がある。すごく自然体というか。歌もダンスもそうだね。良い意味で緊張感がない。歌に関してはピッチがものすごく正確で、驚きました。
ダンスは振り自体はすごくシンプルなんだけど、基礎がしっかりしているな、という印象を受けました。もともと何かやっていた経験はありますか？」
「ハイ、えっと小学校に入る前から中学校卒業手前まで小さな芸能事務所に入ってて、そこで歌とダンスは教えてもらいました」
「なるほど。基礎がしっかりと出来ているっていうのはものすごく大事で、僕もよく見ているところになります。非常に良かったです。本当にありがとう、素敵なパフォーマンスでした。またすぐに会いましょう」
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作者名：ねむる | 作成日時：2023年11月7日 2時
