夢小説【スタマイ】 (ページ10)

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運命【渡部悟】ページ10

「私の運命の人なんです！」

背筋が凍った。
なに？Aちゃん、なんて言った？

運命の人？

「…そっか、そりゃ頑張らなきゃな！」

「はい！渡部さんありがとうございます！」

冗談じゃない。
俺はあの日からずっと君の事が。

言えもしない感情ばかりが胸に残る。
30年ばかりの人生の中で
嘘をつくのがとことん上手くなって。

心からの笑顔、とまでは
いかないが彼女が結ばれるといいと笑った。

「私、そろそろ戻りますね！
書類渡しに来ただけなので！」

「ああ、Aちゃん。
ついでにこれ関に渡しといて。」

「分かりました！
では失礼します！」

ドアが閉まる音と同時に
机につっ伏す。

「はぁ～～～…。」

出たのは盛大なため息だった。

こんな年になって甘い片想いなんて
笑ってしまう。
しかも彼女曰く運命の人が
いるらしいじゃないか。

「…なんの運命だよ、たく。」

4年前にパリで助けた彼女に
日本で再会ができて
こんなに近くで仕事をしている。

お菓子を持っていけば、
誰よりも嬉しそうにしてくれる。

仕事も全力でこなし、
それなりに役に立つ子になってきた。

そんな大好きな彼女が俺に言うのだ。

『運命の人と結ばれたいんです』と。

「…はは…拷問かな……。」

今はただ目を馳せて、
現実から逃げることしか出来なかった。

「Aちゃん…そいつより
俺の方がいいよ。
……俺のこと好きになってよ。」

オフィスに響いた気がした。