幻想小噺

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……それからの流れは
いつもと同じです。
その方の場合、ココロの景色は
素晴らしい成果を上げる自分。
人の目より、自分を信じる方が優先ですよ、
なんてわたくしが微笑むと
手のひらにボールが転がりました。
努力の象徴、素敵ですね。
それを魔法の人形に与えますと、
想いのカケラがサーカス団の
小さなテントに変わります。
魔法の人形にはその方と同じ、
ジャグラーの衣装を着せました。

｢さあ、貴方のものですよ｣

そう言ってわたくしが差し出した瓶を
お客様はそっと手に取りました。
細い指先でガラスの表面を撫で、
魔法の人形に小さく頷く。
ココロに来る物があったのかも知れません。

｢貴方は貴方です、
人の目を気にする必要は無い。
……しかし努力こそが自分の成功に繋がります。
自分の精一杯を、
観客への夢に変えて届けてください｣

それからわたくしとその方は
お茶を飲みながらお話を致しました。
店やこの街のことなど、それはまぁ色々。
わたくしの冗談にくすくす笑ったあと、
そういえばとあの話をされたんです。
要約してお伝えしましょう。

我がサーカス一団には伝説がある。
それは、今も子孫が生きる
ある一族に関する話だ。
昔、サーカス団創設当時のこと。
団長は一人の男をスカウトして
サーカス団の仲間に迎え入れた。
何を見込んでの事だったのかは、
今はもう誰もわからないらしい。
その男が出演する度公演は大盛況、
そのお陰で一団は
人気サーカス団の一つになった。
ところが公演を続けていたある時、
事件が起こってしまう。
パフォーマンス中に突然
例の男が観客達を襲い始めたのだ。
団員たちの静止も聞かず、
むしろ暴走は酷くなるばかり。
人々への理不尽な殺戮を繰り返した後、
両手から迸る業火を放ち
一団の大きなテントを一瞬にして灰に変えた。
炎の輪の中に佇む彼は、
歪んだ笑みを湛えていたという。
突然悪魔に化け笑い続ける姿から、
現在の｢道化師｣という
呼び名と姿が形成されたとか。

……まぁ、こんなところでしょうか。
その｢道化師｣の子孫は未だ繁栄しており、
今もどこかで暮らしているようです。
……道化師一族、なんとなくどこかで
聞いた事があるような。
まぁとにかく、重要なのはその次です。
彼の言葉を聞いて衝撃を受けました。

｢道化師でいることは簡単ではない。
笑顔も泣き顔も仮面の下に押し込んで、
誰にも見せてはならないからだ。
……君にはあるか？本当の姿を隠し通す覚悟が｣

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