騙し合い【歌い手】 (ページ4)

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秘密ページ4

you side

私には兄がいる

名前は高橋渉、血は繋がっていない

でも私にとっては唯一の家族

大好きな、たった一人の家族

だからといって、信用しているわけではない

兄はいつも私のことを思ってくれている…が、｢お互い信用しているか？｣と聞かれたら迷わず｢ノー｣と答えるだろう

育ってきた環境のせいでもあり、職業柄仕方が無いことだと思う

まぁ、それは建前でしかないのだが

｢Aー、何ぼーっとしとるん？｣

｢…ナツメ｣

響希ナツメ

私の大好きな親友であり、仕事仲間でもある

ナツメは金髪、私は銀髪

けれどナツメは仕事中、ずっとフードを被っているせいか黒髪に見られることが多い

私はその逆だ

フードを被っているとはいえ、下を向いた時に横髪が出てしまう

だからすぐに銀髪だと分かる

ナツメと私の髪色から付けられたあだ名がモノクロ

いつの間にかそう呼ばれていた

そこそこ有名なんじゃないかな

｢A？｣

｢あ、ごめん…それと、今は仮にも仕事中｣

｢ええやん、誰もおらんし。
それに、さっきAも本名で呼んどったやん？｣

｢はぁ…まぁいっか｣

私は目の前で縛られている男に視線を移す

その男はﾋｨｯと小さく悲鳴をあげ、目に涙を溜めながら震えている

そんなに殺気はだしていないんだけどなぁ…

そんな事を思いながら、自身の愛刀を持ち直す

そして、刀を男の首横につけ

｢それじゃあ…おやすみなさい｣

滑らせた

綺麗に通った刃は、鮮血と共に月光に照らされた

｢にしても、なんであんなに怖がってたんだろうね｣

｢え…｣

｢え？｣

死体はそのままにしておき、民家の屋根の上で刀に着いた血を拭き取りながらナツメに質問をする

すると、何故か変な目で見られる

｢そりゃ、目の前で仲間が切り刻まれたら…誰でも怖がるやろ｣

｢あぁ…理解した｣

今回殺したのはあの男だけではない

あの男の目の前で約15人ぐらいは殺しただろう

確かに、怖がるはずだ

｢さて、そろそろ行きますか｣

｢あれ、もう行くん？｣

｢うん、レンさんの所にでも寄ろうかなって｣

｢…は？｣

レンという名を出すと露骨に嫌そうな顔をするナツメ

そりゃそうか、ナツメは実の姉のことが大嫌いなんだし

そんな事を思いながら、慣れた動きで屋根の上を走る

そう、私たちは殺し屋

それが兄に隠している秘密…かな