昔話 ページ45
昔、と言っても十五年前の話。
蓬莱城の城主とその奥様にめでたく子供を授かったという報告があった。
城主と奥様は長年子宝に恵まれず、後継としての問題もあり子供がいなかった間の年は常に不安に悩み続けながら過ごしていた。
その事もあり、奥様の妊娠の話は町の人々や城の人間、蓬莱と関わりのあるほかの城の人々もとても喜んだ。
蓬莱城の城主は、歴代頼りがいのある人たちであり良い国づくりをしただけあって今回の子供もとても期待されていた。
そして遂に奥様の出産の日がやってきた。
産まれてきたのは元気な女の子だった。
子が無事生まれ、町中は祭り騒ぎになりほかの白からも祝いの品が送られたりもした。
そんな誰もが喜んでいる最中、一人の人物だけが気に食わなそうな顔をしていた。
それは、子の父親の城主だった。
城主が不満だった理由、それは
＿＿生まれてきた子供が女だったから、だ。
蓬莱城の城主は代々男が務めてきた事もあり、この城主もてっきり男の子が産まれてくるものだと思っていた。
しかし予想外なことに生まれてきた子は女子で、しかも浮世離れした瞳の色。
城主は少し不安になる。
しかし、奥様は違って女子でも城主の役目はきっちり果たせる。だから諦めないで、と城主に何度も説得した。
今から新しい子を作ろうとも、奥様の身体のことを考えればそれは難しい事で
しかもやっとの思いで授かったのもこの女子であり、城主は渋々この子に次期当主としての権利を与えた。
それから生まれてきた女子、姫様はすくすくと育って行った。
綺麗な顔立ち、艶のある長い黒髪、そして誰も持っていない綺麗な色の瞳。
その色は言葉では表せないとても綺麗な瞳だった。
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