【REBORN】包容する大空 ⅩｘＸⅡ【XANXUS】 (ページ21)

今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:100,197 hit

標的1425＊この手にページ21

今、私の手には大きな力がある。

それは綺麗なものじゃない。

沢山の血と犠牲の上に成り立った力だ。

誰もが手に出来るものじゃない。けれど私はそれを手に出来る立場にある。

そして隣に立つこの人は、それを欲した人。

私は、こんな力が欲しいわけじゃない。

望まない人に与えられ、望む人に与えられない。皮肉な世の中。

貴「昔……ずっと昔ね。大切な人を護れるならどんな力でも欲しいって思った事があるの。」

あの時の私は一体どんな力を具体的に思い浮かべていたんだろう。

ただ分かるのは、今の私のような力ではないだろうということ。

貴「でもその一方で、何もいらないとも思ってた。」

怖い。辛い。痛い。

そんな思いをするくらいなら、何も手にしない方が良い。

それなら、怖くなんてないから。

見上げていた目は次第に下がり、その目に地面を映す。

貴「……ただの逃げ…だよね。そんなの。」

Ｘ「……あぁ。そうだな。」

落ちてくる言葉は綺麗でも優しくもない。

それがザンの本音であることも、それを隠さず言ってくれる事も私にはありがたかった。

Ｘ「いらねぇというのは嫌な思いからの逃げだ。何より、護りたいというてめぇの想いからの逃げだ。」

貴「…………うん。」

Ｘ「護りてぇなら、力なんぞに頼るよりてめぇが強くなるしかねぇ。」

あの時の私は、辛くて痛くてそんな思いにも気づくことができなかった。

でも、そうじゃないって教えてもらった。

だから‟私”はそれでも進もうと思えた。

貴「……全部背負っても投げ出さないくらい。失くす事からも逃げ出さないくらい。」

逃げなかった人を‟私”は知っている。

だから恥じないように生きたい。やり切ったって言えるくらい強く在りたい。

不意に頬に触れたぬくもりに顔を上げた。

優しくて穏やか瞳と目が合う。

Ｘ「お前がそう在ろうとしている事を俺は知ってる。」

貴「………ありがとう。ザン。」