標的1401＊貸す手と貸さない手 ページ43
《雲雀side》
Aはガッと檻を掴み、中で倒れてるその人を見つめてる。
黒く長い髪が冷たい地面に散らばっている。
その瞳は閉じられていて、顔色も悪い。生気が感じられない。
貴「起きてっ……！ 起きて！」
Aが必死に呼びかけてる。
駄目だと諦めたくないように。生きていると信じているように。
何度も何度も呼びかけ続ける。
「………………っ」
ほんの微かに瞼が震えた。
相手を見ていないと見逃すような些細な動き。
雲「A。あれ、助けるのかい？」
貴「っ……！」
泣きそうな顔で、それでもしっかり頷くA。
例え助けても、すぐに事切れてしまいそうなのに。
でも君は、目の前の誰かを消して見捨てたりはしないんだろうね。
本当にお人好しだ。
雲「どいて。」
貴「え…………」
Aが僕を見て躊躇うように、数歩下がった。
ボウッ……！
トンファーに炎を灯し、その檻に打ち付けた。
ガッ！
バキィ………！
その檻は容易く壊れ、床に破片が散らばった。
呆然とするAに、視線で倒れてる彼を差す。
貴「大丈夫！？」
その人の元へ駆け寄ったAは呼吸を確かめる。
まだ息がある事に安堵したように、Aが震える息を吐いた。
貴「すぐに上に連れて行くから、待ってて。」
そう言って、Aはその人の腕を肩に回す。
けれど、成人男性の体を支えるにはAの力は弱い。
ふらつきそうになってるし。
手は貸さないよ。群れたくないからね。
貴「雲雀さん。ありがとうございます。」
雲「何の事？」
横目でAを見た僕に、泣きそうな笑みが返って来た。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1315人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：桜
| 作成日時：2019年9月16日 18時
