【文スト】コンビニ店員がゆく、ヨコハマ怪奇譚

13 ページ14

十二番街の倉庫から聞える大きな物音。
それが鎮まったや否や、国木田は倉庫に入り見覚えのある砂色コートの人物に声を掛けた。





｢遅かったじゃないか国木田くん。
ーー虎は捕らえたよ。｣





そこには気を失い倒れた敦。
太宰は云う。彼は虎に変幻する異能力者だと。
国木田は溜め息を吐き出す。
Aは国木田に先程のメモを返すと、太宰の前に突き出した。





『十五番街の倉庫に虎が出る。
逃げられないように周囲を固めろ。』






｢全く、肝が冷えたぞ。

お陰で非番の奴らも駆り出す事態だ。後で皆に酒でも奢れ。｣




｢あ、私はたこ焼きがいいです。｣




｢えっ、それってAちゃん、デェト…？うぐっ｣






Aの細い脚が太宰の脇腹にヒットする。
痛みに悶えて崩れ落ちる太宰を他所に、カツンとヒールの音が倉庫に響いた。






｢ーーなんだ、怪我人はなしかい？つまんないねェ｣




『ーー与謝野晶子。
能力名『君死給勿(キミシニタマウコトナカレ)』』







｢ーーはっはっは！
中々出来るようになったじゃないか太宰。

ま、僕には遠く及ばないけどね。｣




『ーー江戸川乱歩。
能力名『超推理』』







｢でも、その人どうするんです？
自覚はなかった訳でしょう？｣




『ーー宮沢賢治。
能力名『雨ニモマケズ』』







｢どうする太宰。一応区の災害指定猛獣だぞ。｣





『ーー国木田独歩。
能力名『独歩吟客』』






｢いっそコンビニバイトに勧誘しようかなぁ。家は社宿って事で。｣




『ーー大山A。
能力名『？？？』』






｢いや、実はもう決めてある。｣




『ーー太宰治。
能力名『人間失格』』







｢ーーうちの社員にする。｣

14→←12

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す