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そこからはもうあまり覚えていない。ずるずるとAさんを引きずって、でも引きずりすぎて怒られてその辺の公園のベンチに「落ち着いて」と言わんばかりに座らせられた。本当に何してんだ俺は。
何もわからずにAさんから貰った缶を開け続け、頭がふわふわしてきた。俺はずっと怖い顔をして飲み続けていたらしく、Aさんに「怒ってる？」とおずおず問いかけられたことで自分が険しい顔をしていることに気がついて缶をベンチの横に置いて「やめなよ」と呟けば目の前で「え？」という顔をして首を傾げるAさんがいた。
もう一度「夜中にフラフラするのやめなよ、危ないよ」ともう夜中にフラフラなんてしないでよ、と思いながらAさんと目を合わせれば「まあ確かにそうか〜あぶないよね〜」と言わんばかりの視線に「もっと重く受け止めて欲しいんだけど」と思うもここまで言うと流石にめんどくさいのでやめておく。めちゃくちゃ言いたいけど。
その後も2人でなかなかハイペースに缶を開けていればAさんも少しずつ目が眠そうになって少しだけ滑舌が弱くなってきたのがかわいい。そう思ってAさんをじいと見つめていれば見つめてることに気がついたのか顔をおもむろに上げたAさんと目があって、それで、
「きょうもとくんって、かっこいいんだね」
なんて、そんな言葉にどうすればいい？少し赤くなった頬とゆるい笑顔にもう俺は完全にダメだった。酔ったらこうなんの？もう2度と飲み会とか行かないでほしい。こんなこと言う資格ないけど早めにこれを言える資格が欲しい。
ぽかん、と少しぼんやりしながらAさんの言葉を反芻していれば気づいた時にはAさんは「やっべ〜…」みたいな顔をして固まっていたのが更に何だか可愛かった。自分でもよくわかんないこと言ったって気づいたんだろうな、と思いながら「本当に俺のことかっこいいと思ってる？」と追い打ちをかけたのに「本当だったら、どうなるの？」と追い打ちをかけられたのは俺の方だった。試してる？いや本当に疑問？わからない。
でもここで俺まで試したら終わる、そう思って「嬉しいよ、かっこいいが嘘だったら悲しいよ」Aさんにはそろそろかっこいいと思ってほしいし、とAさんの目をみつめて結構決めたと思ったんだけどな、「京本くん結構酔ってるよね」の一言で一蹴された。脈なさすぎない？
そのあとはまあ普通に解散、会話も特にないし。でも酔っ払ったAさんをその辺に転がすぐらいなら俺の家に連れ込むかな、と言おうとしてやめたこと、まだ言ってないや。
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作者名：七瀬
| 作成日時：2023年3月17日 22時
