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…き、急に何？びっくりしてそんなことを思うも当然話したこともなければ関わりもないし名前も知らないので「べ、別に付き合って、ないよ？」と事実を呟けば「ふうん」と意外と興味がなさそうな返答が返ってくる。なんで聞いたの…？
どうしよう、そう思うと同時に冷や汗が伝いながら目の前の女の子の目を見つめていれば「わたし京本くんのこと好きなんだ」と分かりきっていることを言われた。なんかモヤモヤしたがそうなんだと返せば「京本くんのこと好きな女の子たくさんいるからよかった」とどこか含みのある笑顔に「…どういうこと？」と呟けば「誰にでもチャンスはあるってこと」と目を細められる。…なんだ、これは。言いたいことがあるなら言って欲しい、漫画みたいだ、口の中が嫌というほど乾くのに背中は冷や汗だらけだ。
「でも私も京本くんのこと、」
「好きなんでしょ？でも大学生の恋愛なんてタイミングってわかってるよね？」
「そう、だけど」
「…じゃあ、私の言ってること分かるよね？」
付き合ってないことが分かればいいの、と踵を返す瞬間に見えた最初よりもひどく冷たい目にぞくりとしてその場から動けなくなる。…なんでそんなこと言われなければ、と思うよりも先に「正論だ」という気持ちが襲ってきてぐっと唇を噛み締める。
側から見たらイライラするに決まってる、これぐらい言ってやりたいに決まってる。多分周りから見ても私と京本くんはきっと距離が近かった。飲み会でふたりで抜けたことを田中くんも森本くんも知っていたということはみんな知っているということだ。
もちろん大学生の恋愛のほとんどがタイミングでしかないことも、知っている。あの女の子の言っている意味は痛いぐらいに分かる、自分のことに振り向いてくれないし逃げ続ける姑息でめんどくさい人よりも素直で自分のことに対して好意をあらわにしてくれる人に夢中になるのなんて、小学生でも分かることだ。
「多分あんま待ってくれねーよ」と笑った田中くんのことを思い出してため息をつくも京本くんにどう話を切り出せばいいのかわからない。告白された時に多少動転してても頷くべきだった？でもそれはなんだか流されたみたいで嫌というわがままで、それで、
「…帰ろ」
用事は今度にしよう。自分の至らなさに嫌になってなんだか泣きそうになるが泣く資格はきっと私にはない。
でもこのまま終わっていいの？終わらせるのはいやだ、きょうもとくん、まだ間に合うのかな、こんなことを言われないと自分に素直になれないのに嫌気が差すが何もできないのはもっと嫌だ。
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作者名：七瀬
| 作成日時：2023年3月17日 22時
