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「ごちそうさまでした、ありがとう京本大我様」
「分かりやすいね、ほんとに」
前に言っていた通り本当に全額払ってくれた京本くんに手を合わせて拝んでみれば「悪い気はしないね」感謝して、と得意げに笑って胸を張り出したのでやめておく。なんでやめんの、と言われたけど無視しておこう。
「じゃあありがとう、気をつけて帰ってね」
「それ俺が言われるんだ」
Aさんもね、また大学で、と手を振った京本くんにありがとうと笑って背中を向ける。
あ、なんで誘ってくれたのか聞くの忘れた。まあ京本くん話す限りかなり天然なのか気まぐれなのかわからないけどぶっ飛んでたから多分気が向いたとかで誘ってくれたのだろうな、と思いながらなんだか寂しい街頭しかないマンションまでの道を歩く。
今までなんにも話したことない人と話す機会なんてそうそうない。サークルも幽霊部員みたいなものだしバイトとなんだか落ち着かない私生活で疲れていたが心から楽しめた気がする。そう思いながらエントランスを通り満腹感と久々に食べた焼肉の多幸感と京本くんへの感謝を胸にシャワーを浴びて布団にダイブする。ラーメン屋で見つかった時はこの世の終わりかと思ったが焼肉奢ってもらえたし、もう多分京本くんと話すこともそんなにないしいいやと思っていつもの癖で寝る前に携帯を触ることも何だか今日は眠くてできない。
「…あのさ、何？」
「え？」
あれから数週間、意外にも京本くんと私はなんだかよくわからないがダラダラと話し続ける関係のまま続いている。意味がわからない。
焼肉を食べた次の日、京本くんの言葉を胸にいつも一緒にいる友達に少しだけ仮面をかぶるのをやめようと服を変えてみたり、今度一緒にラーメンとかさ、食べに行かない？と誘ってみれば私が思っていたよりもずっと友達に自分を打ち明けるのなんて簡単だった。
「？いいよ？私ラーメン大好きだし」
「えっ！？」
「なになに、そんな驚く？」
てか今日服ちょっと違うね、そういう系統今度私と一緒に選んでくれない？と笑う友人に拍子抜けして椅子から滑り落ちたのも記憶に新しい。変な概念に囚われていたのはずっと私だけだったんだ、と思うとなんか泣けてきた。友達は「ど、どうしたの…」と困っていて申し訳ない。噛み締めてる、今の自分の置かれた状況の良さに…とすっと心が軽くなる感覚に浸っていたのだが「泣いてんの？やばすぎ」という全てをぶち壊す声に顔をあげる。
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作者名：七瀬
| 作成日時：2023年3月17日 22時
