不協和音ラブソング (ページ1)

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　私と京本大我くんの関係、「大学の専攻が同じで必修で見かける顔、何回か挨拶ぐらいの会話はしたことある」それだけ。お互い呼び方だって私の苗字は同じ学科に何人かいるから「Aさん」と向こうは私の事を呼んでいたはずだし私は彼のことを「京本くん」と呼んでいるし、ていうかそもそもさっき言ったように別に話をたくさんする間柄ではない、そう、ないから、気まずいのだ。

「…え？Aさん？」

　何してるの？と驚いた顔の京本くんがラーメンを啜る私の顔を見てびっくりしたように目を見開いているのも、箸を持って間抜けに麺を啜ったままで固まった私も、気まずくて、何も意味が分からなくて、汗だけが、止まらない。そしてなぜこうなったのかは少し前まで遡らなければならない。

　まあいわゆる私は「大学デビュー」というやつだ。高校まではギャアギャアと騒ぎ散らし先生によく怒られるは遅刻はするわスカートは切り落とすわで散々だった。しかし大学生ともなり流石にこんな落ち着きのない人間は恥ずかしいと思い自分には少し無理をしないと受からない大学に入りお淑やか、慎ましく生きようとして入学までメイクや服装を研究して…とやって友達もできた。大学も楽しい。でも、でもどこか落ち着かないのだ。

　…でもこの落ち着かない理由は明確で私のキャラとは全く違う人間像を無理に作り上げてしまった、これに尽きる。少しは自分らしさというかそのままの自分を残しておくべきだったのに無理矢理今までの自分とは正反対のことをしているため疲れるしため息しか出ない。放課後に食べるケーキは美味しい、休日に行くテーマパークは楽しい、全部本当に楽しんでるし友達は大好きだ。でもたまには深夜に罪悪感に塗れるラーメンを食べたいし、意味のわかんない駄菓子を買って盛り上がりたい、でもこんな小学生みたいなことをしてくれる人が周りにいるとは思えないので今日も今日とて一人暮らしをするマンションを出た裏道にあるラーメン屋で1人ダル着でラーメンをずるずる啜ろうとして、今に至る。麺伸びるけどちょっとそれどころではない。

　なんでこんなとこに京本くんがいるんだろう、全然こんなとこ深夜に来そうな人じゃないんだけど、てか見られた、グレーのスウェットにメガネとか終わってる。辛うじて髪だけは割と綺麗に結ってあったのでまだマシだけど。そう思い冷や汗をかきながら落ち着かない頭のまま食券機の前で立つ京本くんとお互いなぜか視線を合わせていたら「ねえ」と口を開いた京本くんが私の手元を指さして呟く。

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