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「…慎太郎?」




 また動かなくなってしまった慎太郎に「おーい」と目の前で手を振る。3の指を作って「何本?」と言えば「さん」と返ってきたので寝てしまったわけではなさそう。ていうかにあってるっていうか何、馬子にも衣装的なこと言おうとした?




「似合ってるっていうか?」
「…犬だ」
「え?」




 なんなの、早く続き言ってよ、と思ってだんだんイライラしながら慎太郎の顔を見ればいつの間にか慎太郎の視線は私の背中の方に移っていた。犬?どこでも歩いてるじゃん…と思いながら後ろを振り向けば珍しい犬種がいて慎太郎どころではなくなり「うわー!」と声をあげて近づいてしまった。いーや、慎太郎が私にいう事なんて決まってるし、多分本当に馬子にも衣装とかでしょ。




「かわいい!」




 そういって駆け寄って慎太郎が何かを言おうとしていたことなど吹っ飛び2人でしばらく撫で回して満足したので「すみません!ありがとうございました!」と告げて飼い主さんに手を振る。慎太郎は何を言おうとしてたんだろう、何思ったんだろう、なんか気づいたみたいな顔に見えなくもなかったけど、まあ今日はいいや。犬可愛かったし、いつか知れたらいいなあとは思うけど。




「あ、ついた…じゃあね、また」
「うん」



 何が起こったわけじゃないけど一緒に帰れたしなんか嬉しいことも言ってもらえた気がするし、今までしたことがなかったから最後にこういうドキドキするやつ、できてよかったな、と少しだけ胸を痛めながら思い慎太郎に背中を向けて、それで、




「A」
「え?なに?」
「それ、もうしなくてもいんじゃね?」
「…え?」




 最近寝不足なの、その髪とか化粧だろ、前のままでいいって、と慎太郎が笑って「おーい、聞いてる?」と言うのに私は何も返せない。

 もうしなくていんじゃね、いや、わかってるけど。こんなの無駄だって、てか最初から自己満足だし、いいって、思ってたけど。




「…あー、そうだね、やめるかも」




 結構頑張ってたんだけどねー!と何もないように、何も思ってないように、努めて明るく笑って、慎太郎に手を振って、家のドアを開けて閉めた途端にずるりと背中から崩れてしゃがみ込む。




「…結構、頑張ってたんだけどなあ」




 ぽつ、と膝に落ちた水滴はひとつふたつと増えていく。胸が痛い。全部自分から始めて、諦めるためなのに、なんで泣いてるんだろう。慎太郎が私に何も思ってないって、わかってるのに、なんで。




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七瀬(プロフ) - lemonさん» わ〜!ありがとうございます!少しでも楽しんでいただけていましたら幸いです!たくさん更新できたらいいな〜と思ってますので最後までお付き合い頂けましたらうれしいです! (2023年2月25日 19時) (レス) id: 652635b4cf (このIDを非表示/違反報告)
lemon(プロフ) - ほんとにこの作品がだいすきで、 このきゅんきゅんがたまりません!!これからの更新も楽しみにしております!^^ (2023年2月22日 22時) (レス) @page16 id: b772619bf0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:七瀬 | 作成日時:2023年2月7日 22時

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