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やさしいひと。*オズワルド* ページ15

ゼエ、ハァ、ハァ、ゼエ

悪い事した後に、死のう。
そう思い立ち、父さんが忘れていったタバコを1本とマッチをポッケに突っ込み家から飛び出す。
別に虐待とか、イジメとかも無かった。けど何故か今日死ぬべきだと思った。

暫く走った後路地裏へ入り、ポッケからマッチを取り出して、ドキドキと緊張で震える手を何とか動かしマッチを擦る。
ボシュ、と音を立てて見事マッチに火がつく。
爛々と赤く燃え盛る小さな炎にタバコを近付け、ちゃんと葉に火がついたか確認してからマッチを振り落とす。

歩きながら一吸いしてみると、途端に予想以上の煙が押し寄せ思わずむせ返る。
喉に張り付くような、ジーンとした不快感が鼻にも残ってしまい、父さんはよくこんな物を吸えるなと少し尊敬した。

「痛…ッ!」

曲がり角に差し掛かった時、猛スピードで走って来た大男とぶつかる。
反射的にタバコを持つ手を庇い思いっきり尻もちを付いてしまった。
立ち上がる一瞬、相手と目が合う。

目は血走り、今にも泣き叫びそうな顔。そして明らかに暴行された傷。血。
あまりの衝撃に呆けている私へ謝る事無く男はまたすぐに走り去って行く。
後ろ姿だけでも分かる。絶対にギャングだ。多分何か失敗したんだ。それで追っかけられて、

「やぁお嬢さん。」

ヒ、と短い悲鳴が漏れる。
突然背後から話しかけられ、恐る恐る振り向くとそこには想像よりも優しそうな顔付きをした黒いスーツの男。
ニコニコと微笑んではいるが、目が笑っていない。ジロリと大きな瞳が私の爪先から頭のてっぺんまでを往復する。

「怖がらないで。少し君に尋ねたい事があるんだ。」
「い、違、私はお金ないでっ、す」
「お、お金?いやだから聞きたい事があるだけで…。今ここに男が来たろう?どっちに行ったか教えてくれないかな?」

ね?と若干上ずった声で優しく語りかけられる。
さっきまでの恐怖と緊張が解け、へたりと足の力が抜けてしまう。
彼はますます困惑した顔で「ん?えー…と、平気かい…?」と見るからに焦った様子。

「ごめんなさい…。」
「いや、良いけど…。」
「うぐ、うぅ…、ぇっ、」
「はっ!?オイ、君…何も泣かなくたって…」
「あっぢに行、ぎまじっ、だ。」
「え?あ、あぁ、あっちね、ありがとう。」

突然泣き出した私に困惑しつつも心配してくれて、何て優しいんだろう。
じきその人も行ってしまい、私も家に帰った後で気付いた。

「全然違う方向を指差しちゃった。」

厄介者*ハリー・ポッター×MCU(ロキ)*→←恋人*二グマ*



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岡P(プロフ) - 初めて読ませて頂きました。どのお話もとても面白く楽しませてもらいました。これからも素敵な作品楽しみにしています。 (2022年3月9日 21時) (レス) id: eaa010ae17 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:もゆう | 作成日時:2020年4月30日 21時

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