[アメコミ] Other [短編集] (ページ6)

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悪党キャプテンコールドページ6

「バットマンって知ってる？黒いヤツ。」
「知らん。」
「見た事は？てかアンタ何処の人？」
「見た事も聞いた事も無い。セントラルシティ。」
「あぁ、フラッシュのトコね。」

頷きながら此方を指差す女。
女、と言っても喋る度に覗く歯は牙のように尖っており、犬歯が目立つ歯並びな上、指の爪が変形していたりと女らしい特徴は一切ない。
性別上は女といった方がわかりやすいかも。

「…アンタは奴と仲が良いのか？」
「奴ってフラッシュ？まさか、噂だけ。最近やりづらいってさ。」

あぐ、と大口を開けてサンドイッチを頬張り咀嚼しながら「知らない内に捕まってるんだと。」等と言う。
行儀を習わなかったのか、と呆れながら目線を新聞に移す。父が捕まった時の新聞に。

「さっき闇の騎士が死んだ時代って話してたよな。そんな時代があったなんて信じられないよ。」
「人はいずれ死ぬものさ。」
「そうだけどさ、う～ん、何かなぁ…」
「それよりもアンタ、宝石に興味は？」
「無い。」
「盗みは？」
「無いね。」

じろ、と此方を疑う様な視線で否定を続ける様に思わず嘲笑が漏れる。
ますます眉を寄せて疑いを深める彼女にすかさず手を挙げて訂正を入れる。

「いや、何もこの時代から盗む訳じゃない。少し手伝って欲しいだけだ。」
「…時間軸が変わる様な事だけは避けたい。」
「大して変わらないさ。男の暴力からある兄妹と女性を助けるだけ。どうだ？」
「…そういう名目なら許されるかも。いいね、興味ありだよ。」

椅子から降りて「で、どうすんの？」と満面の笑みで訊ねる彼女に笑みで応える。

「俺に盗みの協力をしろと！？」
「お前は船を出してバレない内に戻ってくるだけだ。簡単だろ？」
「この野郎…！！」
「早くしてよ、時間が無くなっちゃう。」
「お前までっ！」

うわぁあ、と頭を抱える坊やを何とか言いくるめ、例のエメラルドが有る場所へ向かう。
これさえあれば、あの日々を変えられる。
期待と共に握る手に力を込めた。

「彼の人生は以前と変わりません。」

怒りで頭が沸騰しそうだった。
捩じ切るが如く新聞を握る手に力を込める。

「全くの無駄だった。」

そう言って変わらぬ記事の新聞を床に投げ捨て踏みつける。
残念だったね、と背中を叩く彼女の顔には変わらない笑み。

「悪党はどこまでいっても悪党なんだよ。」

諦めの様にも聞こえる言葉に再び嘲笑が漏れた。父親にも、自分にも向けた嘲笑を。

「救うべきだったか？」