[アメコミ] Other [短編集] (ページ1)

今日:6 hit、昨日:0 hit、合計:7,414 hit

構い倒す:パワーリングページ1

「ねぇパワーリングくん。」

「…な、何度言えば分かる…ッ！？お、俺に話しかけるな、と！」

「えっ？私の事が好き？やっと両想いになれたね結婚しよっか」

「い、い、言ってないッ！勝手な想像はやめ、やめてくれッ！」

吃音どもりの喋り方、デカい口の割には怯えて震える細い身体に死ぬ程のトキメキを感じているとふいにゲートが開きチームの本領が入ってきた。

ごくり、と隣の彼が喉を鳴らす。
その様子を見詰めながら(この人は私が護らなければ)と庇護意識が主張するのを感じる。
残念ながら椅子に縛られているので彼を抱き締める事はできない。悲しい。

そんな事を考えていると椅子ごとぐるりと回転させられ無理矢理目を合わせられる。
「奴らは何処だ？」と低い声で睨まれながら聞かれるけれど私も知らないので黙りこくるしかない。

「あくまでも庇うつもりか。後悔するぞ。」

「後悔するも何も私は知らない。本当に知らないんだよ。ねぇだからさぁさっさと拘束解いてよ。痛いんだよ。」

「解かない。奴らを根絶やしにせん限りは我々の征服は完了しない…お前をエサにして誘き寄せるか。」

「ねぇ聞いた？めっちゃ悪役っぽいよねパワーリングくん。なんかすぐに殺されそうなさ。」

「俺に話しかけるな…ッ！」

ギロ、と睨まれたけどいかんせん下がり眉と涙目なので普通に可愛い。彼だけでも助けて欲しいなぁ。
リーダーは呆れ果てたのか、もう無視して勝手に話を進めてる。私をどう傷つけて誘き寄せるか。

「ねぇ私死んじゃうのかなぁ。」

「し、死ぬだろうな。彼等は容赦しない。今更、死ぬのが怖くなったのか？」

「うんちょっとね。あのね、実はね、君とそっくりな能力と顔の恋人が居るんだけど、捕まる前に喧嘩したの。だからさ、君に会えて良かったよ。最後に恋人の顔が見れた。」

「…お、俺じゃなくて、ソイツが、好きなだけ、だったのか。」

失望。
そんな感じの顔と声で言われた。そうだよ、君のことは好きじゃないよ。と追い打ちをかけるように言うと彼は泣き出した。
それでも彼の仲間とやらはこっちを向かない。彼嫌われてんのかな。

「可哀想だね。恋人いた事ないでしょ。童貞っぽいし。」

鼻をすする音が聞こえてビンゴか、と悟った。
ぐす、とマスクから溢れる涙を見ながら「ねぇ、嘘だよ。」と伝えるとパッと濡れた顔を上げて若干嬉しそうに「もうお前とは話さない」と言われてしまった。

「ねぇやっぱ童貞？童貞なんでしょ。」

「う、う、うるさい、」