夢 :クレフ博士 ページ2
自分の悲鳴で目が覚めた。
ビッショリと冷や汗で湿った服。起き上がってみると、枕にも汗の跡。
慌てて部屋の電気をつけ、自身の両手を確認する。そこには何の異常もない、ただの両手があった。今はそれが何よりも彼女を安心させた。
そして先程まで見ていた悪夢の内容をもう一度だけ思い出してみようと目を瞑った。ここが現実であると再確認する為に。
まず、目の前にはクレフ博士が居て、私は何処からか手に入れた刃渡り20cmばかりのナイフを握っていた。
彼は何時も変わらない、あの心底気味の悪い笑みを浮かべていて、私はそんな彼の首目掛けてナイフを振り下ろして…そして突き刺した。
鮮血が吹き出し、そこらの壁一面を赤で汚した。彼はまだ笑顔で、私がもう一度刺してもまだ笑顔。私は彼を押し倒し、馬乗りになって再度刺す。ごぼごぼと詰まった音を出しながら口を動かしている。それが声であると気付いた時には既に15回刺した後で、床には血溜まりが出来ていた。そして、彼の血は妙に生温かった。
ゾッとした。確かに何度も殺してやりたいと思った事はあったけど、まさか実行に移すつもりは無かった。夢の中とはいえ、あんなにも現実めいた映像に感触、はてや匂いまで。明日からどんな顔をして彼に会えば良いのか。
着替えたついでに手を洗う。べっとりと付いた彼の鮮血が忘れられなくて、まだ付いているような気がして。
「恐ろしい」
洗いながら、ぽつりと呟く。
「よう、昨晩は随分お楽しみだったな」
チェシャ猫の様に引き攣った笑顔。鼻先と鼻先が引っ付きそうなくらいの至近距離。
「あ…」
「良いんだ、良いさ。俺も楽しかった。またやろうぜ」
腹の底から湧き上がる、寒いようなむず痒いような感情。彼の親指が私の口端をなぞる。うっとりとした声音で呟いた。
「感動的だったよ、アレは！」
消えた。:クレフ博士、ジェラルド博士、ブライト博士→←ボツ集。
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作者名：みや | 作成日時：2021年6月27日 10時
