ボツ集。 ページ1
(吸血鬼と誰かと誰か)
「こんにちは、博士」
「こんにちは、083」
機械的な挨拶。
私が"083"と呼称すると、彼はやや寂しそうに肩を竦め、「私の事はデュークと呼んでくれ、と前にも話した筈だがね」と悪戯っぽい笑み。
「まぁ、君に名前を呼ばれるのならどうだっていいさ。さて、今日は一体どんなお話をするのかな?最近、君と会えるこの時間が愛しくって恋しくって堪らないんだ」
机の上に置いた私の手を優しく握り、そのまま口元に持っていってキスをする。ぞわり、と背筋が粟立つのを感じた。このバケモノは何を言ってる?何故今私の手にキスをした?
すぐに手を引っ込め、「申し訳ありません、083。そういったスキンシップは禁止されています」と厳しい口調で注意する。彼は嬉しそうだ。
「博士、私が一体どれだけ君の事を愛しているのか、それを知らなくちゃならないと思うよ」
うっとりとした声音と扇情的な瞳が私を捉える。
「アリャ完全に惚れてるな」
鬱陶しいとはまさにこの事。
「見てろよ、あと少しもしない内にアイツは牙をおっ立ててお前に襲い掛かるぜ」
「賭けるかい?クレフ」
「他人の生死で賭け事なんかしないでください。それと、ご自分の職務を放棄してからかいに来るのはあまり尊敬出来ませんね」
最後まで言い切る前に、クレフ博士がウクレレを弾き始めたので彼等に言葉が届くことは無かった。
(お怒りアイスバーグ)
「クレフ博士は」
受話器を抱えたまま横を見やれば、非常に乱雑な字が並んだ紙を突き出される。
"居ませんと言え"
「居…ません。博士は」
「居るんですね。居るんだな?そこから動かないよう伝えてください」
ブツリと切られた電話。ハァ、と心底ガッカリした様な溜息。
「嘘が下手すぎンだよお前はよ」
「アイスバーグ博士相手に嘘を吐いた事自体褒められるべき事ですよ。何て事させてくれたんですか」
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作者名:みや | 作成日時:2021年6月27日 10時