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135:緑竜は服を着ていない ページ38

(ラディウスフィアside)

少しハスキーな女の声が聞こえる。
次に、胸元に何かが当たる感触。


意識を失う前より楽になっている事に気づき、瞼を開ける。
流血も止まったようだ。

この娘が止血をしてくれたのだろうか。
ドラゴンをも助けるだなんて、優しい娘だな。




すると突然、娘は脇腹を抑えて崩れるように倒れ込んだ。
途中、何かを呟いたようであったが、よく聞こえなかった。

――そういえば、魔力が多少戻っておるな。
とりあえず変身魔法で人の姿になり、近づいて娘の様子を見る。



息は荒いが、意識がないようだ。

よく見ると、脇腹を抑えた手の隙間から血が溢れておる。
娘が来ている上着を脱がせると、包帯が巻かれておった。しかしそれももう真っ赤に染められておる。

傷が大きいのかもしれない。
これ以上痛めつけないよう、慎重に包帯を取る。


「ああ……」

想像していたより酷い。剣か何かで刺されたのだろう、傷が深い。
というより、よくこれで死なないな。


――――ん、死なない?
ここは『あの世』ではないのか?

……冷静に考えてみると、『あの世』ではない気がするぞ。
しかし、私は確かに死んでいるはずだ。血も出ていたから霊などでもないはず。




いやそんな事より、今はこの娘の治療だ。


空間魔法で様々な物を収納しておる空間から、薬草で作った塗り薬、水の入った瓶、針と糸、柔らかい布や包帯を取り出す。

水で傷口の汚れを流し、布で拭く。
塗り薬を塗って、出来るだけ素早く丁寧に、傷口を縫う。
もう一度血を布で拭き取る。


「……よし」

久々にしては、よい出来ではないか?




私は自分の胸元を見る。
縦に大きな傷痕があり、止血されても、まだ表面から血が滲んでいるようだ。


…………体内から鼓動が聞こえる。
いやしかし、確かに心臓は渡したはずだ。ならこの音は何なのだ。

まさか、回復したのか? 心臓が?
今までそんな事はなかった。そもそも、私は治癒魔法など使えないのだ。



――死んだからこそ、回復したとでも言うのか。






ああしかし、これではダメだ。
あのまま死んで、消え去るべきだったのに。


――彼に逢いたいと、思ってしまうではないか……。

135:いろいろあって。→←134:緑竜の甘く温かい夢



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零兎(プロフ) - 小説読んであらすじ見てきますー (2017年8月1日 21時) (レス) id: 377a049b03 (このIDを非表示/違反報告)
零兎(プロフ) - [壁]_-)お久しぶりです。誰か居ますか? (2017年8月1日 21時) (レス) id: 377a049b03 (このIDを非表示/違反報告)
みかん☆ - 更新します! (2016年7月31日 21時) (レス) id: 2b73766c3c (このIDを非表示/違反報告)
神楽柚希.@じゅんは我の彼氏.(プロフ) - 猫田あみいさん» 教えてくださりありがとうございます…!!タイトル入れてきますねッ. (2016年5月31日 23時) (レス) id: f95df422fb (このIDを非表示/違反報告)
猫田あみい(プロフ) - 神楽柚希.さん» タイトルが抜けてますよヽ(´o`; (2016年5月31日 20時) (レス) id: 26aa867e92 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りあ x他6人 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2016年2月23日 0時

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