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61話 -幻想に生きる- ページ16

有明は離れた場所から薄田とAが言葉を交わすのを見つめるだけの自分に嫌気がさしていた。


小さくて弱々しくて守らなければならない存在であるAが、いつの間にか大きく、強くなっていた。



Aを危険な目に合わせない為に、マフィアから追い出した日が思い出される。



“出来が悪い奴は足を引っ張るだけだ”



Aの泣き出しそうな顔が強く印象に残っていた。



勝手に生かして、守った気になって、勝手に殺させようとして、一番エゴを押し付けていたのは自分じゃないかと嗤う。



全部中途半端で、結局Aに辛い想いをさせてしまう。



「何が、兄貴だ」

_____


薄田は相対するAに云われた言葉が頭から離れなかった。



役者を目指していた妹が交通事故で脳死状態になった現実を、とうの昔に受け止めていた筈だ。




妹の心臓を持つA。頭では理解しようとしても、妹が目の前に居るように感じた。



更に、元々異能者であった妹の異能力も出現した事もあり、益々妹の姿を探すようになっていった。



異能力が上手く制御出来ないAを見る度に、Aの存在を疎ましく感じるようにもなった。



唯一の家族への愛が歪んだ果てに産まれた虚構。



「Aの中に妹は閉じ込められている(・・・・・・・・・)
自由になりたいですよね、Aが居なければ、Aが居なければ……居なければ……」

__________


少女は一歩一歩薄田に歩み寄り、手を伸ばせば届く距離まで近づいた。



(あたし)がお兄ちゃんと話せるのはこれが最後。だから、ちゃんと目を見て、私の話を聞いて』



薄田は貼り付けた微笑みのまま僅かに頷いた。



『お兄ちゃんが何時までも妹である私を探し続けるから、私も私で消えきれなかった。

死んでるのに、干渉しちゃいけないのに、迷子みたいに彷徨うお兄ちゃんを放っておけなかった……!!』



薄田は黙っている、その心に言葉は響いているのか。



少女は一呼吸置いて続ける。



『私達は提供者。この子達は被提供者。
この心臓はこの子のもの。
今の私の姿はお兄ちゃんの幻想なの』



暫くの沈黙、口を開いたのは薄田だった。



「……確かに貴女の云う言葉は正しい。ですが」



徐ろに懐から短刀を取り出し、薄田は微笑み暗い瞳で短刀を見て、Aを見た。



「幻想でも構わない」



言葉と共に目の前で赤が飛び散った。

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四月朔日(プロフ) - とても面白いです。続き楽しみにしています! (2017年4月17日 9時) (レス) id: fcc84377d6 (このIDを非表示/違反報告)
アサヤ(プロフ) - 雄牙さん» ありがとうございます! 更新頑張ります…! (2016年12月26日 23時) (レス) id: e442709ae5 (このIDを非表示/違反報告)
雄牙(プロフ) - とっても良いです!面白いです!最高です! 更新頑張って下さい! 応援してます! 頑張って下さい! (2016年12月26日 19時) (レス) id: 568d874e06 (このIDを非表示/違反報告)
アサヤ(プロフ) - χCielχさん» ありがとうございます!! 期待に応えられるよう頑張ります…! χCielχ様の方も盛り上がって来ましたね…! 朔くんはセシル君とはまた違った雰囲気があって好きです…! (2016年12月7日 23時) (レス) id: e442709ae5 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 続編、おめでとうございます!楽しく読ませて頂いております。これからも頑張って下さいφ(。。*) (2016年12月7日 18時) (レス) id: 8739b32233 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アサヤ | 作成日時:2016年12月6日 23時

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