人喰い道化師のマーチ【小説Ver】 (ページ7)

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No.6【錦城火華】※ ページ7

雑居ビルが建ち並ぶ通りは、真っ昼間だというのに一人の少女以外誰も歩いていなかった。

それもそのはず。何せ、凶悪な道化師(殺人鬼)が辺りをうろついているのだから。

少女は、ポケットの連絡用トランシーバーに左手で触れつつ、右手にナイフを握り締めている。

「･･････見つけた」

小さな声で呟いた。

少女の数メートル先に、『ソレ』は居た。口を血で汚しながら、一心不乱に何かを貪っている。その足元には、元は人間だったであろう肉塊が転がっていた。

気配を感じたのだろうか。
『ソレ』____否、道化師(殺人鬼)はゆっくりとした動作で振り返ろうとした。

だが、それが叶う事は無かった。

「遅いよ」

一瞬にして距離を詰めた少女が、標的の左目にナイフを突き立てたからだ。

少女は抉るようにしてナイフを引き抜く。すると、その箇所から鮮血が噴水のように流れ出した。標的は数秒間痙攣した後に完全に動かなくなった。

少女はナイフを片手に、空いている左手でポケットからトランシーバーを取り出した。

「もしもし、こちら火華。水紘、聞こえる？」

『こちら水紘。はいはい、ちゃ～んと聞こえてるよ～』

間髪入れずに、少年の声が聞こえてくる。

「片付けたよ」

『うん知ってる。てか、普通に見てたし』

どこから、と問う必要は無かった。

遠く離れた高層ビルの屋上に微かな光が見える。彼の持つスナイパーライフルが光を反射して光っているのだ。きっと、スコープを通して一部始終を見ていたのだろう。

『ねえ火華、そんな事よりさ！今日のお昼は何にする？』

「唐突だね。水紘が決めていいよ」

そんな事を呑気に話し始めた少女の背後には、二体目の道化師(殺人鬼)が迫っていた。

「というか、こんな話ししてて良いの？」

『いいじゃん！もう終わったようなものなんだしさ』

背中を向けている少女に両手を伸ばし･･････

「じゃあ、水紘に任せるよ？」

飛びかかろうとした。だが･･････

『やだなあ、最初からそのつもりだよ！』

トランシーバーから発砲音が聞こえたのとほぼ同時に、少女の衣服の背中が血で染まった。
道化師(殺人鬼)は頭に銃弾を喰らい、首から上を失くした状態でその場に倒れた。

「水紘･･････服が汚れたよ」

『火華が鈍臭いのが悪いんでしょ？避ければいいのに』

少年の声に悪びれた様子は全く無かった。

「はあ･･････ご飯より先に洗濯かな」

溜め息と共に、少女は力なくうなだれた。