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No.7【東雲梓沙】※ ページ8

路地裏に足を一歩踏み入れば薄らと匂っていた鉄の香りが一層強くなる。

足音を消して奥から聞こえてくる何かを貪っている音に向かって進む。見えてきたのは頸動脈を引き裂かれ赤い華を散らした濁った目を濡らしている横たわった女性の左目を抉り取り口に入れた髪の長い女性いや、道化師。彼女は柔らかい動作で振り向く。

「……あら、貴方も左目が赤じゃない。もしかしてお仲間?」
「…違います。この目は生まれつきのものだから」

そう、私の左目は何故か赤いのだ。そのお陰で大変苦労してきた。

「それを言ったら私だって生まれつきってことになるのだけれど?」
「…語弊がありましたね。敵です」
「あら、残念。それじゃあ……」

女性の口が耳元までパッカリと裂ける。其処には鋭い牙がびっしりと並んでいた。口を大きく開けたまま地を強く蹴って急接近してくる。あと数メートル程でずっと後ろで組んでいた手を前に出して二丁拳銃を構え左目、眉間を撃ち抜いた。

頭から紅い華を咲かしながら倒れた女性は二度と起きない。

それを一瞥し横たわっている女性に駆け寄る。左目を抉られた眼孔からは暗闇が覗いている。裂けた腹からは臓器がはみ出していた。見開かれたままの濡れた右目をそっと閉じた。

「……間に合わなかった。ごめんなさい」

涙の跡を親指で拭って頭を少し下げて合掌する。

目をゆっくりと開けて当たりを見回す。奇跡的に咲いていた野花を一本折って女性の手に握らせた。

「これぐらいしかできなくて…本当にごめんなさい。来世はきっと、明るいから。おやすみなさい」

頭を撫でてくるりと、踵を返した。

No.8【歔游柁 雨淵】→←No.6【錦城 火華】※



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あいす(プロフ) - 更新しました (2020年2月6日 17時) (レス) id: 8e07c2b94c (このIDを非表示/違反報告)
あいす(プロフ) - 更新します (2020年2月6日 17時) (レス) id: 8e07c2b94c (このIDを非表示/違反報告)
あいす(プロフ) - ほたて。さん» ありがとうございます (2020年2月6日 17時) (レス) id: 8e07c2b94c (このIDを非表示/違反報告)
ほたて。(プロフ) - あいすさん» 返信が遅れて申し訳ありません。メッセージでお送りいたします。 (2020年2月1日 14時) (レス) id: 9d5ee3c439 (このIDを非表示/違反報告)
あいす(プロフ) - すみません。パスワードを教えて欲しいです (2020年1月19日 12時) (レス) id: 8e07c2b94c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Annihilation x他10人 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/9A66AzbTW0ucNfU  
作成日時:2019年10月11日 17時

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