夢見草篇/諦めに近いもの ページ22
「…待てよ。」
後ろから聞こえた声に足を止めた
女は黙って男に近づいていくが、数メートル先で止まった
「こんなことしなくて良かったのに。わざわざ敵に塩を送るようなこと」
その言葉に男はクク…と笑を零した
「夢からは覚めたみてェだなァ…なんの夢を見てた?
ガキの頃の思い出か?仲間達と剣を取り合ったあの頃か?
それとも……
___最期にその手が掴み損ねた大事な
茜は顔を伏せ鼻で笑う。表情は前髪に隠れて見えなかった
「いつからか…そんな夢はもう見なくなった。お前はまだ見てるのか…その夢を」
晋助の瞳…その左眼が見えなくなる最後の瞬間を___
「夢なんかじゃねェよ…頭から離れねェ…忘れもしねェさ……この世界を壊すまでな」
晋助の左眼に最後に何が映ったかなんて分からない
先生の優しい顔か、転がった先生の首か
____それとも別の何かか。
「___好きにすればいいさ。壊すなら壊しな。私には止められない」
私の言葉が意外だったのか晋助は僅かに目を見開いた
「てめェもやっと分かったか。この腐り果てた幕府の姿が」
「そんなの最初から分かってる」
私には分からない。
お前が最後にその左眼に映したものも
銀時の苦しみも…結局は私には分からない。
分かってあげられないんだ。
"あの子達を頼みます___約束です。"
"頼みます"なんて…責任重大じゃん。先生…
「____死なないで。」
これしか言えなかった
晋助は黙ったままだ。きっとそれは約束出来ないのだろう。
暫くして晋助が紫煙を吐き出す
ゆっくりと口を開いた
「俺ァ…この世界を壊す前に、殺らなきゃならねェ奴がいる。」
分かってる。___銀時でしょう?
「どちらかが死ななきゃならねェ。それはテメーも分かってんだろ」
うん、分かってる。
もう誰もお前を止められない。だから
私はいつか、それを見届けなくてはいけない。
____どんな結果になっても。
「そろそろ帰りなよ。警察呼んじゃうよ?」
「クク…警察が指名手配を逃がすなんざ世も末だなァ」
茜は苦笑しため息をつく
「何カッコつけてんの。そんな着流し一枚でほんとは寒いくせに」
そう言い、晋助に着流しを投げた
晋助は私の投げた着流しをキャッチしたがそれを身につけようとはしなかった
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雪乃(プロフ) - 続き待ってます (1月15日 1時) (レス) @page25 id: 3057047a96 (このIDを非表示/違反報告)
美結菜 - とても面白いです!続き楽しみにしています! (2023年2月15日 19時) (レス) @page25 id: f842e5f119 (このIDを非表示/違反報告)
tmailes(プロフ) - 楽しく読ませていただきました。更新楽しみに待ってます! (2021年5月19日 1時) (レス) id: ece380cb29 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あかお | 作成日時:2020年11月8日 19時