ポイズン・モンシェリ

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《 SIDE → 平野紫耀 》



『紫耀さーーん！』

パチリ、瞬きをする。
それでもやっぱりそこにいて。

「……なにやってんの？A」

『お酒、飲んでて、そしたら会いたくなって。
だから、会いにきちゃいましたーー！』

……酔ってる。

ニッコリと笑った彼女を見て、
はあ、とため息を吐く。

しかし、そんなため息とは裏腹に
少しだけ上がった口角。

『紫耀さん、迷惑でしたか？』

大きな目が、ゆらっと揺れる。
ぷるんとした唇を噛み締めている。

唇を噛むその癖が、似ている。

「迷惑じゃないけど、
……こんな時間に出歩いたら危ない」

ぽんぽんと頭に触れると、
安心したように顔を上げ、またニッコリ笑った。

その姿が忠実な犬みたいで、可愛い。

でも、ごめんね。
俺は君の事、ちっとも好きじゃないんだ。

ふわりと、その唇にキスを落とすと
柔らかく甘い感覚に包まれる。

『紫耀…さん、』

彼女を構成する全てが甘い。
顔も声も、匂いも全部。

「ん？どうした？」

『好きです。好きすぎて、辛いです』

全て、思い通った通りだ。

こうやって、君を味方につけて
すべて思い通りにする。


「子供、五人ほしい」

『こ、こども…っ！？』

「うん、五人」

あの日、Aにも確か同じ事を言った。
あいつは五人！？って驚いてたなあ…

『保育園みたいですね』

ふっと笑い、賑やかですねと言った。

「……嘘やけど」

『嘘なんですか！？』

「うん(笑) 二人かなあ〜」

『二人…』

「二人で支えていけるように。
お互いがひとりぼっちにならんようにな。」

そう言えば、Aがぎゅっと俺の手を握った。

『私は、五人ほしいです』

「…え？」

『二人より、五人の方が心強いじゃないですか』

「A……」

真っ直ぐで凛とした瞳。
ふわっとしているのに、どこか芯がある。

その目に見つめられ、ドキンと胸が音を立てた。

『紫耀さん、それってプロポーズと思っていいですか？』

酔っているせいか、普段より積極的だ。

「はは、どうやろう」

きっと、いずれ結婚すると思う。

だけどその時は、もっと派手に
もっとずっと記憶に残るようにしてあげたい。

ここに来て何故かそう思った。

『なーんか、狡いなあ、紫耀さんは』

俺の肩にコツンと頭を乗せた。
それを撫でてやると眠そうに目を細める。

その姿を見て、

もしかすると俺は、とんでもない誤算をしてしまったのではないか、そう思った。



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