飲み干せない炭酸水 ページ4
‥
カランコロン、聞き慣れたベルの音が静寂な店内に響く。それはお客様が来た合図で、私は読んでいた商品のカタログから視線を上げてそちらを見やった。
「いらっ、しゃいませ…？」
すると、どうだろう。お揃いのスポーツバックにお揃いのジャージ、皆背が高くて勇ましい顔をしている。あんな高い所から見下ろされては視線だけでも縮こまりそうだ。
とてもこんな閑静なお店とは無縁そうなインパクトの強い男子たち。背に学校名がプリントされているし、近くの高校生だろう。髪色も茶髪に赤に……赤？それは校則違反ではないのか…？なんでここに来た…？浮かび上がってくる疑問の数々に脳の処理が追い付かず、思わず挨拶の声が上擦ってしまった。
私の声が聞こえたのか、赤髪の、瞳がクリっとした男子がこちらを向いた。そのウミネコの様な鋭い眼光に、慌ててレジの椅子から飛び上がり「何かお探しですか？」と何時もの常套句を述べる。
「ふ〜ん、お姉さん、結構幼気あって可愛いじゃん！」
「はい？」
まるで蛇が獲物を物色するように、私の周りをくるくる回りながら舐めまわすように見つめてくる赤髪の青年。本心なのかジョークなのか分からない言い回し、掴み所の無いひょうきんな彼は私の苦手なタイプの人だ。会話も全く成立しない。ひたすら怖いので佐藤さんにバトンタッチしたいところだが、生憎彼は奥で事務仕事中。この異様な光景の中、私はただただ下を向いて震えることしか出来ない。
「…おい、天童。店員さんが困っている。離れるべきだ」
救世主とはまさに貴方の様な人を言うんだろう。太眉の凛々しい、ザ・日本男児らしい出で立ちの青年が天童と呼ばれた人に制止をかける。
ジャージの襟を引っ張られたﾞ 天童 ﾞさんは、後ろに仰け反ってグエッと鳴いた。
‥
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作者名：ヤマト | 作成日時：2020年3月4日 3時
