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嘘か誠の分水嶺 ページ3



雑貨屋さんの日常は、そう忙しくない。
開店前に仕入れた納品の個数チェック等を済ませて、店内に陳列していく。あとは簡単に清掃を済ませたら、お客様が来るまで待つだけだ。

これが大手のお店ならもっと忙しい空間なのだろうが、ここは町中にポツンとたたずむ静かなショップ。良いのか悪いのか、車が盛んに行き交うような所では無い為、そう混雑する時間もない。
だからといって全くお客様が来ない訳ではなく、さっきも言ったが常連のOLさん達や近所のお婆さん、子連れの主婦なんかがお昼時くらいに来店される。
特に繁盛しているのは、季節の変わり目か大きなイベント事がある時。うちの店は季節事のディスプレイにこだわっていて、例えば今なんかだと商品を飾る棚に桜柄の敷物を敷いたり、壁にパステルカラーのシールを貼って雰囲気を明るくしてみたり。こういった少しの工夫をする事で四季折々の店の良さを知ってもらい、次の時の客引きになるらしい。
ぽわぽわした佐藤さんならではのアイデアだと思う。あんな風でいて、実はしっかりお店の事を考えている、頼れる店長さんなのだ。

「Aくん、あと少しでお昼時だから商品並べ終わったら奥においで。新しく入荷した紅茶を淹れてあげる」

「ありがとうございます。もう少しで片付きますからすぐ行きますね」

脚立の上から声をかけると、はいよ、なんて短い返事が聞こえた。
最後の一個を並び終えて、ダンボールを抱えながら下へ降りる。

「…あ、ネイルはげてる」

ダンボールを開けた時に無理に力を入れたからか、数ヶ月前にちょっと高めのネイルサロンでやってもらったシンプルな白茶のネイルが欠けていた。先端には白銀と薄紫の小ぶりな宝石が付いていて、結構気に入っていたのに。

「なんだっけ、スピリチュアルなんたらってやつだっけ?」

人生における転機の予兆の中には、『物が壊れる』といった場合があるらしく、特に恋愛の運気なんかは身体の先端(爪先や指先)からくるものらしい。靴紐が切れるとかネイルがダメになるとか、そんなような事だと前に佐藤さんが教えてくれた。
そういったことが起きた場合、運命の人と出会ったりなんかするらしいが果たしてどうなのだろうか。

うーむ、と悩んで何時までも来ない私を佐藤さんが心配そうに覗いていた。


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作者名:ヤマト | 作成日時:2020年3月4日 3時

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