独りの少年と五年生。

二人の生活、後編　(６) ページ42

見送ってくれる雑渡さん達に軽く手を振りつつ、帰路に着く。


小屋の前まで行くと、中から小さな音が聞こえた。

扉を開け、声をかける。


A「…ハチ？何してるんだ」


八左「お、A。お帰り！」


目に眩しい笑顔をカウンターで食らった。
どうやら、帰りが遅い俺を心配して、先に晩飯を作っていたらしい。


うわ、泥だらけじゃないか！ご飯の前にお風呂入ったらどうだ？とか言ってきた。
大丈夫か？と心配された。

お前、将来良い夫になるよ。絶対。




まあそんな感じで、飯を食べながら今日あった出来事をハチに話した。

雑渡混奈門の件に関しては、この人たらし。と呟かれたので、お前のことだよと呟き返した。
ポカンとした顔が、超面白くて笑った。



手に入れた情報について伝えると、心なしか涙ぐんでいる様だった。
そこには突っ込まず、そっとしておく。




上手く行けば、明日には『忍術学園』とやらの関係者に出会えるかもしれない。


淡い期待を胸に抱き、眠りについた。







夢を見た。

どこかの長屋で沢山の子ども達が走り回っている。

皆違う色の服を着ていて、お互いの好きなように過ごしていた。



何と平和で美しい光景だろうか。

懐かしい気持ちになっていると、急に景色がぐにゃりと歪んだ。



そのまま目が覚める。




いつも通りの朝だった。

外からは鳥の声がして、左には眠ったままのハチが居る。



何故あんな夢を見たのかは分からないが。



A「……たまには悪くないかも」



俺は小さく笑みを溢し、布団から起き上がった。

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