薬屋は傾国美女でした。六巻 (ページ4)

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254話ページ4

桜花(インファ)「悪いけど、薬作ってくれるならその後診療(しんりょう)所に連れて行ってくれない？」

A「診療所ですか？」

　Aは首を傾(かし)げる。

　『医局のことだろうか、それなら疲れるだけだ』とAと猫猫(マオマオ)は思う。

　それを察(さっ)したのであろう。

桜花(インファ)「医局とは違(ちが)うわよ。何ていうの？医官は居ないんだけど、その代わりに違う人が居るっていうか。とにかく愛藍(アイラン)が知ってるから」

　薬師二人は分かりましたとこくりと頷(うなず)く。

　✱

　診療所とやらは後宮の北側にあった。

　洗濯場の離(はな)れ。

　そこには白い服を着た女官たちがいた。

　薬師二人は「そういえばこんなところもあったなぁ」と思った。
　要は忘れていたのだ。

　ここに来て最初に説明されていたはずなのだが、当時二人は不貞腐(ふてくさ)れながら後宮入りしたのでそんなの覚えていない。

愛藍(アイラン)「すみません。風邪(かぜ)をひいたみたいです。」

　愛藍(アイラン)が女官の一人に声をかける。

　忙(いそが)しそうな女官は一瞬(いっしゅん)怪訝(けげん)な顔をしたものの、洗濯籠(かご)を置き、愛藍(アイラン)の額(ひたい)に手を当てる。

女官「微熱(びねつ)だね。舌(した)出してみ。」

　女官は目を細めたあとで、愛藍(アイラン)の下まぶたを下げる。

A「(やぶ医者よりも手際(てぎわ)が良い。)」

女官「そこまで酷(ひど)く無いようだけど、二三日無理(むり)をしなければ問題(もんだい)ない程度(ていど)だよ。どうする？」

　どうやら、見立てもしっかりとしているようだ。

愛藍(アイラン)「妃にうつすわけにはいかないので、泊(と)めてもらえませんか。念(ねん)の為。」

女官「ふーん。」

　女官は洗濯籠(かご)を置いて持つと、すたすた診療所へと入っていく。