薬屋は傾国美女でした。六巻 (ページ21)

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271話ページ21

A「(早く終わらないものか)」

　そんなAの心情とは関係なく、一緒に連れてこられた壬氏(ジンシ)は妙に真面目な顔でじっと看板と扉を見ていた。

　『青き扉を通るべからず』

　青と紫と黄の扉が並ぶ。帝は黄色の扉を選んだ。

帝「これが最後の扉のようだな」

　ぎいっと音がして、その奥には扉が一つしかなかった。ただ、看板には質問の代わりにこんなことが書かれていた。

　『王の子よ、だが、王母の子ではない』

　明らかな拒絶だ。

帝「前に来たときと同じ結果というわけか」

　帝は髭(ひげ)の奥に苦い笑いを隠(かく)しているようだ。

　壬氏(ジンシ)はそんな帝をじっと見ている。

帝「余には、天意を知ることはできまいか？」

老師(せんせい)「なにをおっしゃいますやら。この廟(びょう)を後宮の中に閉じ込めた時点で、ここを管理する者は私一人になりました。天意もなにもないでしょう」

　袖に手を入れ、頭を下げる老宦官。

　そこには、宦官になりつつも、なにか揺るがない誇(ほこ)りのようなものを感じた。

　老宦官はこの廟(びょう)をずっと管理していたのだろう。

　後宮ができても尚ここにいるということは、去勢してまで守り続けていると言うことだ。

　帝はすべて看板の指示に従って扉を選んだ。なにかその中に違う意図でも含まれていたというのか。

　老宦官は扉を開けた。

老師(せんせい)「さて、お帰りはこちらへ」

　釈然(しゃくぜん)としないまま、Aたちは外へと出た。

A「(条件で皇帝は否定されたのだろうか)」

　Aは指を折って、いくつ部屋があったのか、どの扉を選んできたかを思い返す。

　地面に座り込み、思い出せる限りの組み合わせを木の枝で書いていく。

　皇帝の前で失礼だと思いつつやってしまう自分がいる。

　老宦官はそれを見て、腰(こし)をかがめた。

老師(ろうし)「きっと、羅生(ルオメン)や昼間のおじょうさんならわかるだろうね」