薬屋は傾国美女でした。六巻 (ページ15)

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265話ページ15

小蘭(シャオラン)「ふぁおふぁお」

　口いっぱいに菓子を含(ふく)んでいるため、不明瞭(ふめいりょう)に聞こえた。

　Aはなんとなく喉(のど)に詰(つ)めそうだったので宦官に頼んで水を用意してもらう。

　案の定、Aが戻ってきたら胸をとんとん叩(たた)いていた。

　机の上には、教本と砂箱が並んでいる。

　教本は配布されるが、紙や筆は消耗(しょうもう)品なので与えられたものだけではすぐ足りなくなる。

　なので、紙の代わりに砂の上に字を書いて覚えるのだ。

　小蘭(シャオラン)の人差し指の汚れから、熱心(ねっしん)に覚えようとする気概(きがい)は見えた。

　途中、眠たそうにしていたのは、まあ、目を瞑(つむ)ろう。

　Aが差し出した湯飲みに口をつけると、ぷはっと息をついた。

猫猫(マオマオ)「少しは覚えた？」

小蘭(シャオラン)「へへへ、まだまだだよ。あとで、これ老師(せんせい)に聞くんだ」

　と、教本の貢(ページ)を開いて見せる。

　先ほど老師(せんせい)が読んでいたところより何貢(ページ)か先だ。

小蘭(シャオラン)「私ね、頭悪いから、先に覚えておかないと、たぶん追いつけないんだ」

　そう言って、菓子の残りを口に頬張って水で流し込んだ。

　猫猫(マオマオ)とAはなんとなく小蘭(シャオラン)についていくことにした。

　教室に使われている部屋を出、渡り廊下(ろうか)を抜ける。

　隣の棟に老師(せんせい)がいる部屋があるらしい。

　外には夜宴のときに舞台として使われていた池が見え、その奥に古い廟(びょう)がある。

　後宮ができる前からあったという廟(びょう)は、Aと猫猫(マオマオ)の知るものと少し構造が違う。