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王国 : 商店街
「居場所…って、俺は何も」
『この国内に住んでるモンスター達、皆落ち着いた声をしてるんです』
彼女が視線を移した先には、同胞でじゃれ合う二体のスライム。
そのすぐ側の木陰に居眠る蝙蝠と、広場で遊ぶ子ども達。
一見平穏極まりないと言えるこの風景へ恍惚を得た様に聖女である彼女。
そんな彼女は、陽の光が齎したとでも現すであろう恩恵を、どうやら俺に重ねているらしい。
『ほら、あんなにも静かな顔立ち…ね？鬱さん』
「は……い、」
無償の愛。
…とやらに身震いする程浸っている彼女の蕩けた甘い声に惹かれ、俺は吐息のような返答を漏らす。
『…貴方の、お陰でしょ？』
柔風に耳飾りが揺れて、又、彼女の声に重なる。
聞き取れなかったと言ってしまいたいような、肩に伸し掛るその言葉。
何処かで聞いた事がある様なフレーズと音。
嫌と言う程の優越と、緊張と、背徳と。
無垢過ぎる声質に、丸で脳内に何かアブナイ液体でも注入されたかのような動悸に噎せ返りそうになる。
「…いや、特に何もしてなくて」
『え？でも…』
「Aさーん！」
『！…また、お話聞かせて下さいね』
柔らかな笑みは聖女そのものだが、彼女の奏でるあの音だけは目紛しい程に異質だ。
悲しさを現す冷たさ、怒りを現す高音。
可哀想な何かを憐れむ調律は聖書と言うより、悪魔記号に声を与えたかのような……
「どうしたの？珍しく神妙な面持ちね」
「…能力持ちとしては、ああいうのどうなん？」
「え？」
ロボロを筆頭とする国民たちに又囲われる彼女を指す訳でも無く、目線だけを移して見せる。
察する女騎士は其方に目を付ける事も無く、俺に問いを掛けて来た。
「…貴方、彼女に何かあるの？」
「いや、何かって…」
「さっきから少し変よ、確かに何の武器も無しにモンスターを鎮静させたのは不可思議だけど…」
疑う所なんて無いだろうと言いたげな声を聞いて、俺は溜息さえ漏らす事も忘れていた。
分からないのだ。僕も。
彼女の何にこんな不快感を得ているのか、不信感を抱いているのか。
そう、全く検討もつかない。
だからこうしてオプロイテに問い掛けた訳だが、この不安をその概念にのみ浸してしまうのも見当違いなのかもしれない。
「例えば、さ」
「え？」
「その魔法みたいな…いや、ほぼ魔法か。魔法の剣と、この科学的なライター」
ポケットから取り出した手に握るオイルの揺らぎ。
「どっちが魅力的で、強力的？」
続く (更新停止中)
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からめるそおす(プロフ) - コメント失礼致します。とても面白くてスラスラと読んでしまいました。語彙力の塊でとても羨ましいです笑これからも頑張ってください。 (2021年1月29日 21時) (
レス) id: dde2f5b423 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：じーにゃ | 作成日時：2019年11月27日 18時
