18話 ページ19
「七花、そろそろ起きなさい。」
聞き覚えのある声に七花は重たい瞼をあげる。
目の前に広がった空間を認識するのには数秒の時間を要した。
「何をぼーっとしているの、七花。父さんはもう行ったわよ。あなたも早く朝食を取って行きなさいな。」
はぁ、とため息の似合う女だった。
「ね、姉ちゃん.....?」
そう、この清楚を形にしたような、ため息の似合う女は紛れもなく鑢七花の姉である鑢七実だ。
「まだ寝ぼけているの?早く行きなさい。父さんが待っているわよ」
困惑したような七花の声に七実は取り合わず、身支度を急いてくる。
「親父.....?」
「もう、七花いい加減にしなさい。」
そこでやっと、七実は七花の方を向いた。
あまり顔色が良くなく、気怠げな表情をしている。
鑢七実の身体の弱さはその線の細く、華奢な見た目に歴然としている。
表情や態度は七花のそれと通じるものがあるように見えるが、実際はまるで違う。気怠そうなのは単に本当に体調が悪いのである。
「あなた、何で泣いているの?」
「え、」
次に怪訝そうな声を出したのは七実の方であった。姉の言葉に七花は自分の目元に触れる。言われた通りしっかりと濡れていた。
「いや、あれだ、欠伸だよ、」
「ふーん。そう、まぁいいけれど。さっさと支度して行きなさい。怒られても知らないわよ。」
「うん、分かった姉ちゃん。」
取り繕ったような言葉に本当に納得した訳ではないだろうが七実はそう言ってまた、作業に戻る。
はぁ、とため息をまた吐きながら。
ここで七花は自分の置かれている状況に気づく。
____ああ、そうか私は夢を見ているんだ
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作者名:声優2次元大好き! | 作成日時:2020年6月25日 18時