13話 ページ13
「なぁ、」
突然声をかけられ、全身の皮膚がはねた気がした。
目を向けると、人がいた。しかしそこにいる人物が誰だか分からず、緊張が走る。
青々しい夢ノ咲学院の制服姿の一見女の子に見える彼は私の驚き様に、紅い硝子玉のような瞳をぱちくりとさせた。
数秒、私は彼の出現が現実かわからず呆けてしまう。
動悸が鳴り止まないのでひとまず落ち着こうと、胸に手を当てたところで、『お師さん』が顔を顰めた。
「なぜ、ここにいるのだね。仁兎」
「なぜって、斎宮が体調崩したって聞いたからお見舞いに来たんだ」
仁兎さんは、私の方をちらりと見てから、「でも先客がいるならまた明日来るよ」と言った。今すぐにでも帰りそうな仁兎さんに「いや、私はもう帰りますので……」と引き止める。肩からズレたブレザーを着直して、何か言いたげな2人に会釈してから静かにドアを閉める。
気づけばドア付近にいたはずの、オッドアイの人と月永レオさん、鳴上嵐さんがいなくなっていた。
暗くて長い廊下を1人で歩く。
先が見えない廊下はなんだか気味が悪くて、視線を下げる。やっているうちに、学校にいるように思えた。一日に何度も舌打ちをされ、「はやく、きえろよ」「しね」と言われながら歩く廊下。それに反論せずに息を潜めて生きてきた。
思えば一般生徒の私のことを、なぜアイドルの月永レオさんが気にかけるのだろうか。休日にこんなところで、ファンの多い月永レオさんたちの時間を奪うのがとても悪いことのように感じられた。
私の足は、もう少しで玄関にたどり着くところまで来ていた。そこで、とある一部屋からオレンジ色の光が僅かな隙間から漏れだしているのに気がつき、視線をちらりと上にやる。
もしかしたら、あの部屋に集まっているのかもしれない。
という淡い期待を胸に、ドアを開けた。
その瞬間、目の前にあるモノに私は目を奪われる。
学院側に聞いても「見つからない」の一点張りだった、兄がアイドルだったことを示す一つのモノ。
ショウケースの中に綺麗におさめられた、マネキン。
そのマネキンが身にまとっていたのは紛れもない、兄が所属していたユニットの衣装だった。
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F:(プロフ) - あたたかいコメントありがとうございます。空白の件に関しては、バランスよく間をとって書いていく、ということに決めました。拙い文ばかりの作品ですがこれからもよろしくお願いします。コメント欄での返信、失礼しました。 (2020年2月5日 10時) (レス) id: 722605b18e (このIDを非表示/違反報告)
Mashiro Lio(プロフ) - コメント失礼します。空白のことですが、今のままで大丈夫だと思いますよ。確かに適度な空白は読みやすくなるでしょうが、あまり多いと逆に読みにくくなりますし(占ツク内のかなり多くの作品がこれに当てはまります)、私はこれくらいが「小説」らしいと思いますよ。 (2020年1月11日 21時) (レス) id: 088a429c13 (このIDを非表示/違反報告)
みゆ(プロフ) - コメント失礼します。あくまで私個人の意見なのですが、言われてみれば他の作品より空白少ないかも…?程度で、気になってしまうほど読みにくくはないですよ! (2020年1月11日 20時) (レス) id: b98ca5a8bc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:F: | 作成日時:2019年12月25日 16時