Whitelight Ⅱ【実/況/者】 (ページ34)

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84 やわらかい凶器ページ34

「…フジくん。」

「レトさん…。」

どうして、こんなことになってしまったのだろう。

俺とコハクであるイベントのための会議に出席していた。

会議終了後。

階段で降りているときに横目に何かが飛んできた。

聞こえたのは一瞬の静寂、騒々しい、生々しい音。

少し後ろを歩いていたはずのコハクが階段の下にいた。

心臓の中心部分を槍で突き刺されて
体の向こう側まで貫通したかのように動けなくなった。

でも、コハクからは一瞬たりとも目が離れなかった。

じわりと広がる黒に心臓は飛び跳ねた。

そのせいで、すぐに動けた。

大声で必死に誰かを呼んだ。

叫び声に気づいた人達が寄ってくる。

誰かが呼んでくれた救急車に飛び乗った。

テキパキと施されていくコハクを呆然と見ていた。

病院についてからここでお待ち下さい。と止められた。

電話を使用してもいい場所へ移動してから
フッとレトさんに電話をかけた。

初めに出てきたのは動画の時とそんなに変わらない声のトーン

俺はしっちゃかめっちゃかの頭の中を
なんとか整理しながら説明していく。

そこからレトさんの声は段々と低く、少なくなっていく。

「どこの病院？」

そう聞かれて少し慌てた。

そういえば、何も聞いていなかったからだ。

「ちょっと待って。」

それだけを告げて、繋げたまま
携帯を操作し現在位置を確認する。

病院を伝えてから30分程してレトさんが着いた。

そこから最初へと戻るのだが、それ以降一切会話はない。

空気まで消毒された匂いが鼻をつく。

時間は永遠と過ぎているように感じる。
そう思っていると目の前の扉が開いた。

まず男性が出てきた。

「一命は取り留めました…が、予断は許されません。
我々としても、天命を尽くさせていただきます。」

もうかれこれ見ていないドラマのような台詞を
ここで聞くとは思わず、
またしても呆然としながら一礼をした。

大きなベッドが出てきて、目を閉じられたコハクを見た。

腰から叩き落とされそうになった。
何も言えず、そのまま見送った。

「フジくん。一旦座ろう。
んで、落ち着いたら…今日は…もう帰り。
休んで、また明日出直そ。」

椅子に座らされた俺は情けない声を上げた。

「ごめん…レトさん。」

この際

神でも仏でもなんでもいいから

…助けてくれ。