54 ばつの悪い ページ4
「アハハ〜そうですか〜
あ…コハクさんお酒空いてますよ？
注ぎましょうか？」
ばつが悪くなったのか話題を変えようとして
私の目の前のテーブルを見てそう言った。
「あまり飲まないようにしているんです。」
お酒は好きだし、飲み会も好きなのだけれど、
知らない人が多すぎる場ではあまり飲みたくない。
本当に初期の方の飲み会では
"付き合い"だと思って飲んでいた。
飲み会の回数を重ねるとすぐにガッチさんに気づかれた。
たしかに皆といるときとそれ以外が違いすぎるからなぁ…笑
最初の乾杯はお酒でするものの
そのあとはすぐに落ち着かせる方向へと持っていく。
私的にも気を遣わなくていい方法を教えてくれたのは
ガッチさんだ。
私がガッチさんに対する
信用度がはね上がったのはこれである。
「へぇ…可愛いところもあるんですね。
でも大丈夫ですよ。今日は僕がお家までちゃんと送ります。」
どう考えても下心丸出しの返答に
顔がひきつったものの笑顔は取り戻した。
「結構ですよ。」
少し強めに離さないと離れないと考えたため
冷たい言葉をシールドのように張ってみた。
「遠慮しないでくださいよ〜何頼みます？」
あろうことか張ったシールドを突き破ってきた彼に驚いた。
日本語は通じているのだろうか。
「お酒の強要は一番ダメですよ〜？」
私の席の前に座っていたガッチさんが船を出してくれた。
救命ボートだ。
「明日もお仕事があって潰れるわけにはいかないんです。
お気持ちは貰っておきますね。ありがとうございます。」
すかさず私は乗り込んだ。
「そうですか。それじゃあ僕はこれで。」
ガッチさんの登場により
私の横からそそくさと退場していった後ろ姿を見た。
「ガッチさんありがとう。」
「コハクも一回突き離したのにね。」
「よかった。伝わってはいるんだ。」
言い方が少し悪かっただろうかと思いもした。
「うん。俺もまさか突破してくるとは思ってなかったけど。
ちょっとしつこそうだから気を付けときな？」
「そうだね。」
それ以来○○さんが私の近くに来ることはなかった。
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作者名：みこと | 作者ホームページ：http://なし)ー
作成日時：2022年1月20日 23時
