us,gt_過呼吸_#01 ページ12
ガッチさんが周りをキョロキョロと見回していた。
「どした？」
「マコいないよね？」
言われて気がついた。彼女が居ないことに。
「…ホントだ。」
「な〜んか嫌な予感しててさ。」
この人が言う嫌な予感は
当たることがほとんどだから無視はできない。
「行く宛は？あるの？」
「え。うっしーも来てくれるの？」
「まぁな。」
楽屋を出てすぐの階段を登っていく
ガッチさんの後ろ姿を追いかけた。
「屋上…？」
静かに。とガッチさんがポーズをした。
ゆっくり扉が開くと広い屋上が広がった。静かに扉を閉めた。
ただただ広いだけでベンチすらもない屋上。
そして彼女の姿も見当たらない。
読みが外れたのか。と思っているとガッチさんが歩き出した。
俺はとにかく付いていくしかない。
そう思っているとすぐに角を曲がった。
今、俺たちが出てきた建物の反対側へ回り込むと…
彼女が立っていた。
「…ガッチさんとうっしーじゃん。
どしたの？ここの屋上なんて喫煙者ぐらいしか来ないよ？」
今ですら目を腫らしているお前を探しに来たんだわ。
なんて…
「探しに来たの。」
言った。
「え？誰を？」
言っちゃったよこの人…！
「全部抱えちゃうお馬鹿な子。」
「…別の場所にいるかも。」
「そっかぁ…ここにいると思ったんだけど…
前回のイベント終わりも屋上にいたし…。
そのときも、どこにも誰にも弱音吐かず耐えてたから。」
今知らされたことに驚きながらも話を聞き続けた。
「その子はいつの間にかまとめ役になる子でね、
いつだって誰よりもお客さんと出演者の事を考えてる
優しくてすっごく良い子なの。」
「へぇ…」
「だからさ、皆甘えちゃうのよね。
相談も一方的だし、
理不尽なことも結構平気で言っちゃうし。」
そういえば今日なんてイベント自体は成功したのに
終了後、出演者が彼女に詰めた事もあった。
「今日のとかそいつのミスじゃないしな。
どう考えてもその出演者がミスったし
あんなのただの八つ当たりでしかねぇから。」
あれはお前のミスじゃないよ。
「前もそうだったけど
俺、その子に信頼されてないのかな。」
俯いてきていた彼女の顔がいきなり上がって
目がしっかりと合って
「信頼してない訳じゃないよ。
言っちゃうと…自分が…弱くなっていく…から…。」
ついに自分事になった。
「弱くていいじゃない。せめてココだけでも。」
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作者名：みこと | 作者ホームページ：http://なし)ー
作成日時：2023年10月14日 22時
